2022.02.25

【W杯予選ライバル情報】キャプテンはニック・ケイ…Bリーグ勢3人と若き才能が融合するオーストラリア

島根のニック・ケイが若いオーストラリア代表のキャプテンに [写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 2月27日に日本と対戦するオーストラリアは、平均年齢24歳の若いチームだ。オーストラリア協会の公式サイトにも『Young Boomers team ready for JAPAN』(「ブーマーズ」はオーストラリア男子代表の愛称)と紹介されている。
 
 オーストラリア代表は東京五輪で初の銅メダルを獲得したFIBAランキング3位の強豪チーム。東京五輪ではブライアン・ゴージャンヘッドコーチのもと、司令塔のパティ・ミルズ(ブルックリン・ネッツ)やジョー・イングルス(ポートランド・トレイルブレイザーズ)らNBA勢を中心に、マシュー・デラベドバ、ネイサン・ソービー、クリス・ゴールディング、ジョック・ランデール(今季よりサンアントニオ・スパーズ)らオーストラリアプロリーグ(NBL)の精鋭たちが集結してつかんだ悲願の銅メダルだった。

 今回、沖縄にやってくるメンバーには上記の主力選手は不在だが、新指揮官となったロブ・ベヴァリッチHCのもと、日本に馴染みの深い選手がチームを牽引する。東京五輪の銅メダリストであり、ヤングブーマーズのキャプテンに任命されたニック・ケイ島根スサノオマジック)をはじめ、アンガス・ブラントリース・ヴァーグ(ともに香川ファイブアローズ)らBリーグ勢がチームの柱となる。そのほか、若手のNBL勢が6人、ヨーロッパで活動する選手が2人、NBAグローバルアカデミー豪州でプレーする選手が一人という顔ぶれが25日のチャイニーズ・タイペイ戦のロスターとなっている。

 最大の注目選手はなんといってニック・ケイだろう。現在、Bリーグで好調を維持する島根の主軸として万能ぶりを発揮している。島根ではエースキラーを務め、誰よりも走り、常にリバウンドに跳び込む献身的なプレーで貢献。リード・トラビスが怪我で不在の時はスコアラーになる一面を見せるなど、チームに必要なことを、重要な時間帯でこなせる非常にクレバーな選手である。代表キャリアも豊富だ。2017年のアジアカップ(優勝)を皮切りに、2019年ワールドカップ(4位)、そして銅メダルを獲得した2021年の東京五輪といったビッグゲームで国際舞台の経験を積み上げている。

 香川でプレーするアンガス・ブラントも代表歴は長い。2017年アジアカップやワールドカップ2019の予選に出場。日本にとっては忘れもしない、オーストラリアに79-78で劇的勝利を収めたワールドカップ予選(2018年6月)にもニック・ケイとともに出場している。あの千葉で迎えた歓喜の試合に、2人も対戦相手としてコートに立っていたのだ。また、ブラントと香川のチームメートであるリース・ヴァーグは初のシニア代表デビューを日本で飾る。こうしたBリーグ勢3人の選出は、コロナ禍での移動や時差、コンディション面を考慮すれば最善の選択肢であり、日本を知り尽くしていることからも、ヤングブーマーズのリーダーとして期待されていることだろう。

 そのほかの顔ぶれも興味深く、NBLで台頭してきた若手とヨーロッパを主戦場とする選手が選ばれている。フィンランドでプレーするクレイグ・モラー(203センチ/27歳)とドイツでプレーするアクアチ・マルアチ(198センチ/23歳)はストレッチ4の動きができるパワーフォワード。また、昨夏に開催されたU19ワールドカップに出場した4選手が選出されているのも注目だ。そのうち3人はすでにNBLでプレーし、一人はNBAグローバルアカデミーオーストラリアでプレーしている19歳の選手がメンバー入りした(NBAグローバルアカデミーオーストラリアでプレーする17歳の選手も候補としてエントリーされていたが、チャイニーズ・タイペイ戦では選外)。

 今回の来日メンバーから見えることは、チャイニーズ・タイペイ同様に若いチームでありながらも、オーストラリアの場合は、アンダーカテゴリーで力をつけたサイズのある次世代を育成する狙いがあること。また、ニック・ケイに代表されるような新しいリーダー作りの目的がうかがえる。アジアのライバルとして、そのチーム作りの過程にも注目したいところだ。

 見どころとしては、オーストラリア戦に安藤誓哉が選出されれば、ニック・ケイとの島根対決となり、ファンにとっては待望の顔合わせとなるだろう。島根のポール・ヘナレHCは安藤やニック・ケイだけでなく、香川時代にはリース・ヴァーグを指導しており、さらに名古屋ダイヤモンドドルフィンズのショーン・デニスHCがNBLでの指導歴を持つなど、Bリーグとオーストラリアの関係性は深い。様々な縁の中で迎えるオーストラリア戦は注目の対決となる。

文=小永吉陽子

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