“コート上の監督”として君臨する篠山、卓越した技術と戦術眼で川崎を勝利に導く

キャプテンとしてリーグ戦全試合にスタメン出場しチームをけん引する篠山[写真]=B.LEAGUE

 3月10日に行われたB1リーグ第23節第1戦で、川崎ブレイブサンダースはホームの川崎市とどろきアリーナで京都ハンナリーズと対戦し83-80で勝利。5連勝を飾り、チャンピオンシップ進出へのマジックを3とした。

 第1クォーターで28-19とスタートダッシュに成功すると、第3クォーター中盤には最大22点差をつけて京都を突き放す。しかし、ハードなディフェンスからのトランジションに活路を見出した相手に反撃を許し、第4クォ-ター残り14秒で1点差まで詰め寄られた。それでも、辻直人が4本連続でフリースローを沈めて辛くも逃げきった。

 そんな苦しい試合展開の中、篠山竜青は11得点4アシストに加え、冷静な状況判断とゲームメークでチームを勝利に導いた。

 篠山は後半に追いあげを許した理由をこう分析する。「得点差に多少余裕がある場面で、チーム全体としてオフェンスでのスクリーンの掛かりが甘くなったり、ディフェンスがソフトになったり、ちょっとしたプレーが雑になった」。前節の仙台89ERS戦でも第3、第4クォーターで相手に追いあげを許し、特に第1戦ではオーバータイムにもつれこむ展開となった。しかし、篠山によれば、これは最近の傾向というわけではなく、「今シーズンの序盤に調子が良かった時や、もっと言えば昨年の(NBL)プレーオフでもこういう試合展開になることは多かった」と語り、チームとして改善していくべきポイントと説明した。

 しかし、篠山は京都の猛烈な追いあげにも慌てることはなかったという。第4クォーター残り3分12秒に5点差まで縮められ、藤井祐眞に代わってコートイン。「(藤井)祐眞が立て続けにターンオーバーをしてしまっていたので、しっかりとシュートでオフェンスが終われるように意識した。そういった意味では自分の仕事はできたと思う」との言葉どおり、ポイントにはならなかったものの、鋭いドライブからの切りこみで立て続けに長谷川技栗原貴宏のアウトサイドシュートを演出。ボールを効果的に動かすことができず嫌な流れに傾いていたオフェンスを活性化させた。

 試合終了残り14秒、モー・チャーロに3ポイントを決められ、わずか1点差となったシーンでも、「3点差以上あり、ワンバスケットで逆転される状況ではなかったので、焦りはなかった」と、ややもすればリードしている側が混乱に陥りかねないようなシビアな終盤の試合展開でも篠山は決して冷静さを失わなかった。1点を争う厳しい状況の中、キャプテン登場により川崎は試合が締めくくることができたと言えるだろう。

 チャンピオンシップ進出へのカウントダウンと同時に、中地区優勝へのマジックも9とした川崎。昨年末から辻とライアン・スパングラーが負傷離脱し苦しい時期が続いたが、それでも大崩れせず勝ちを拾えているのは、北卓也ヘッドコーチの手腕や選手層の厚さもさることながら、卓越した技術と戦術眼で“コート上の監督”として君臨する篠山の存在が大きい。辻が本格的に復帰を果たし、永吉佑也野本建吾ら伸び盛りの日本人選手がスパングラーの穴を埋めるべくさらに奮闘することで、川崎のBリーグ初代王者がより現実的なものになるだろう。

文=山口晋平

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