4月28日、プレミアムフライデーのこの日、川崎市とどろきアリーナにて、B1リーグ第30節第1戦が行われ、川崎ブレイブサンダースが横浜ビー・コルセアーズと対戦。今節は29日に第2戦が行われることもあり、『29(ニック)の日』と銘打たれたこの節での来場者には各日先着2500名にニック・ファジーカスのお面が配布された。28日にアリーナへ詰めかけたバスケファンは3011名、老若男女が、笑顔が絶えないというよりむしろ仏頂面とも言えるファジーカスのお面をかぶって声援を送る姿はなかなかシュールである。
ファジーカスはNBAダラス・マーベリックス、ロサンゼルス・クリッパーズでプレーした後に、ベルギー、フィリピン、アセアンリーグなどを経て、2012年に東芝ブレイブサンダーズ(現川崎)入り。走力、ジャンプ力は若干劣るものの、210センチの高さを活かしてフックシュートやフェイドアウェイシュートなどの多彩なシュートバリエーションでゴールを量産する“スコアリングマシーン”だ。
第29節終了時点で、中地区を45勝10敗(勝率0.818)と圧倒的な力で独走するチームを引っ張るファジーカスの貢献度は、その個人成績を見れば明らかだ。1試合平均27.5得点、同12.6リバウンドとシーズンを通して“ダブルダブル”を記録している。
“ニックの日”の主役はこの試合でも大活躍。柔らかなタッチから繰りだされるシュートは、リングの大きさが2倍になっているのではと思うぐらい簡単に吸いこまれた。点差が開いたことで第4クォーターはベンチに下がっていたにも関わらず、終わってみればチームトップ26得点をマーク。さらに12リバウンドを記録するなど予測の良さと巧さも見せつけ、ペイントエリアを完全に制圧した。当然のように“ダブルダブル”を成し遂げたファジーカスは、この日アリーナに詰め掛けて、お面をつけて応援してくれたファンの声援に、しっかりと応えてみせた。
試合後、ミックスゾーンに現れたファジーカスは“ニックの日”について聞かれると、「クールだね。楽しかったよ。ニックの週末に会場も盛りあがっていたし、本当に楽しくプレーができたよ。毎月29日が“ニックの日”になるとうれしいね」と語り、お面の仏頂面がウソのような素敵な笑みを浮かべた。
レギュラーシーズンも終盤戦に差し掛かり、5月13日からはチャンピオンシップが幕を開けるBリーグ。川崎の今後の行方は、この絶対的なエースの双肩に懸かっている。
文=村上成