初代チャンピオンの称号を狙う桜木ジェイアール「100パーセント勝つ自信がある」

Bリーグ一番乗りで地区優勝を決めたシーホース三河は、Bリーグ初代チャンピオンの称号を懸けて戦うチャンピオンシップ(以下CS)において優勝候補の一つと目されている。西地区で圧倒的な強さを発揮した“常勝軍団”を冷静沈着なプレーでけん引したのが、在籍年数チーム最長となった桜木ジェイアールだ。リーグ有数の実力と実績を誇るベテランは、自身の技術と経験を若手選手に受け継ぎながら、さらなるチームの進化を目指している。日本屈指の強豪クラブが、新たな歴史に名を刻むために――。

インタビュー=武藤仁史
写真=黒川真衣、Bリーグ

――3月26日の大阪エヴェッサ戦でシーホース三河は西地区優勝を果たし、早々にCSへの出場を確定させました。長年シーホース三河をけん引していた桜木選手にとって、今シーズンのチームの出来はどのように評価できますか?
桜木 チームはかなりいい状態で、正しい方向に進んでいると思います。週を重ねるにつれてチームは良くなっています。僕らはそれを目標の一つとしているので、その目標を達成できていると言えるでしょう。

――シーズンの初めから比べると、現在のチームは良くなっていると。
桜木 そうですね。Bリーグの開幕当初から比べると非常に良くなっています。チームには新しい選手も加わりました。新加入の選手がチームに慣れるのには、時間が掛かるものです。そういう意味でも、とても良くなっています。

――具体的には、どういった点が向上しているのでしょうか?
桜木 一番良くなっているのは、チームケミストリーの部分。やっぱりディフェンスでもオフェンスでも、チームは一つになってプレーしなければいけません。シーズンが終盤を迎えるにつれて、チームメートがどう考えているのか、どうプレーするのかなど、お互いの意識を共有できるようになってきました。

――桜木選手個人としては、得点やリバウンド、アシストで安定した成績を残しています。ご自身の成績に関しては、どのように評価していますか?
桜木 まあ、ぼちぼちだと思っています。ターンオーバーが思っていた以上に多く、フリースローのパーセントももう少し高くしないとチームの助けになりません。そういった意味で、ぼちぼちですね。

――今シーズンの先発出場数がチーム内で最多です。鈴木貴美一ヘッドコーチから信頼されていると同時に、求められている役割が大きいと感じているのではないでしょうか?
桜木 そうですね。チームにいる期間が一番長くなりましたし、HCからは高いレベルを求められています。でも一方で、そういった役割を担うことを自分が求めている側面もあります。自分がそういう立ち位置になるのは自然なことだと感じています。

――3月の川崎ブレイブサンダース戦では、フリーな状態の桜木選手を見逃した狩俣昌也選手へ、直接声を掛ける場面がありました。新加入や若手の選手に対して、積極的にアドバイスしようと意識していますか?
桜木 シーズン当初、彼らには意図的にアドバイスしていませんでした。というのも、最初は彼らがどういう選手で、チームに何をもたらすことができるかを、観察することに徹していたんです。ただし、CSが近づいてくるとミステイクは命取りになります。なので現在は、彼らをはじめすべての選手がその時点でベストになれるように、最適な方法でコミュニケーションを取ろうとしています。

――金丸晃輔選手は自分の要求や相手の改善してほしい点をチームメート同士で伝え合わなければいけないと話していました。桜木選手もより多くのコミュニケーションが必要だと感じているのでしょうか?
桜木 現状には満足していないので、金丸と同様に、次の数週間で自分自身もその部分を改善していこうと思っています。チーム内において、橋本(竜馬)が一番コミュニケーションを取る選手です。彼がケガから復帰することで、そういった場面もかなり増えると思っています。

――桜木選手の場合、技術面とメンタル面だと、どちらのアドバイスが多いのでしょうか?
桜木 チームメートはすでに十分なスキルを持っているので、やはりメンタルの部分の指摘が多いです。例えば「こういう場面でミステイクしてはいけない」とか、そのポイントでみんなが共通した意識、メンタルを持てるように、アドバイスすることが多いです。

――川崎戦後には「最近はCSのことをよく考えている」と語っていました。その時に発言した意図について教えてください。
桜木 同じようなプレーで、同じようなミステイクをしているのだとしたら、それを見つけてしっかり直す必要があります。CSではミステイクが命取りになります。時々のミスであれば問題ありませんが、それが続いたりパターン化したりしているのであれば、CSまでに改善しなければいけません。そういうことを考えて発言しました。

――桜木選手は今までに数々のタイトルを獲得していますが、Bリーグ初代王者という歴史的な称号を獲得するために、CSに対する意気込みが強いのでは?
桜木 自分の中で過去のタイトルというのはあまり意味を持っていません。自分にとって一番大きいものは、これからのタイトルです。加えて、Bリーグはみんなが待ち望んでいた組織で、これまでプレーしたリーグよりも注目度がとても高い。そういうリーグでトップになるというのは自分にとって大きな財産になりますし、このリーグで勝ちたいと、強く思っています。

――5月13日からCSが始まります。その舞台でどういったプレーを披露したいと考えていますか?
桜木 プレーメーカーとして最善な選択をしたいです。誰がフリーな状態か、どのプレーが一番簡単にスコアを奪えるか。そういうことを常に考えて、チームに自信を与えるプレーをするのが、優勝へ向けて自分がやりたい役割です。

――普段どおりの冷静なプレーが見られるということですね。CSのような場面でも、試合に臨むテンションは普段の試合と変わらないように心掛けるということですか?
桜木 テンションは全然違いますよ(笑)。自分はCSになったら100パーセントの力を出して、観客の皆さんがわかるぐらいのエネルギーを使ってプレーしたいと思っています。

――想像してたものと真逆の答えでした(笑)。
桜木 自分にも両極の性格があるんです。普段と反対側の性格を出すとちょっと疲れるので、本当はあまり出したくないんですけどね(笑)。

――CSでライバルとなるチームは?
桜木 今までアルバルク東京と川崎がファイナルで当たることが多かったので、その2つのチームがライバルになると思っています。今シーズンで言えば、川崎が一番完成度の高いチームだと思います。レギュラーシーズンでもお互いぶつかり合う、タフな試合になりました。やはり川崎が一番のライバルだと思います。川崎には辻(直人)選手、(ニック)ファジーカス選手という2人の素晴らしい選手がいます。ただし優勝するには2人だけの力ではなく、チーム力が重要になります。そういう意味では、我々の方にチャンスはあると思っています。

――改めて、シーホース三河の強さについて教えてください。 
桜木 やはり多くのタレントをそろえているという点が一番の強みです。パスでもリバウンドでも、ブロックでもシュートでも、高い水準を備えている選手が多い。ただし、それは出場するすべての選手が今までどおりのプレーをしたらという話で、それを可能にするためにはコミュニケーションが大きな意味を持ってくると思います。

――実際にCSに来場されるブースターの方々には、どういうところを見てほしいですか?
桜木 一番見てほしいのは、このチームがどれだけ勝ちたいと思ってプレーしているか。我々は昨年のNBLファイナルに負けているので、特にあのコートにいた選手はその想いが強いと思います。Bリーグ初年度ということもあって、チーム全員の勝ちたい気持ちはとても大きい。そういう部分を楽しみに見てほしいと思います。

――最後に、Bリーグ初代王者の座を勝ち取る自信はありますか?
桜木 100パーセント勝つ自信があります。自分たちにケガがなく、コミュニケーションをもう少し改善して、小さなアジャストメントをしていけば、確実に勝てると思っています。

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