【比江島慎 短期集中連載最終回】「充実したシーズン」を終え、2019年W杯へ向けさらに成長を

「長かった」とホッとした表情で、比江島慎はBリーグ初年度を振り返った。60試合以上をこなし、並行して日本代表の活動にも参加。疲労困憊な上、Bリーグ初代チャンピオンの称号も獲得できなかったが、それでもどこか晴れやかだった。バスケットの楽しさを再認識し、「自分にもまだ伸びしろがあると気付かされた」からだろう。「満足できるものではなかった」が、だからこそ来シーズンは「もっと成長できる1年に」。その向上心はとどまることを知らない。

インタビュー=安田勇斗
写真=山口剛生、Bリーグ

――Bリーグ1年目が終了しました。振り返ってどんなシーズンでしたか?
比江島 長かったですね(苦笑)。初めて経験したことがたくさんありましたし、日本代表の活動もあったので。初めて対戦する相手、初めて訪れる土地、いろいろと新鮮でしたけど、同じ相手と2回3回と戦う中で疲労も大きかったです。そうした点も含めて、長かったなという気持ちが一番ですね。

――シーズン前にFIBA ASIAチャレンジが行われ、シーズン中も代表合宿や親善試合が組まれていました。Bリーグと並行して参加するのはやはり大変でしたか?
比江島 結構キツかったです(笑)。オフが取れなくなりますし、疲労も溜まってくるので。

――東アジアバスケットボール選手権が6月3日に開幕します。コンディションは大丈夫ですか?
比江島 そうですね。もうリーグ戦はないですし、多く出られたとしても1試合20分程度だと思うので、ベストなパフォーマンスが出せると思います。

――シーズンをとおしての自身のプレーをどう評価していますか?
比江島 悪くはなかったですけど、満足できるものではなかったですね。シュートは確率良く決められましたし、アシストも少しはできましたし、最低限の仕事はできたと思うんですけど、ミスも結構多かったので。

――貪欲ですね(笑)。今シーズンも素晴らしいパフォーマンスだったと思います。
比江島 自分の中では昨シーズンが一番良くて、それに比べると少し落ちますね。昨シーズンも優勝はできませんでしたし、最大の満足感は得られていませんけど、いい手応えをつかんで終えることができたので。今シーズンよりは良かったかなと。

――シーホース三河はチャンピオンシップ準決勝で栃木ブレックスに敗れました。第3戦までもつれこむ接戦でしたが、実力差などは感じましたか?
比江島 プレースタイルが違うので単純比較はできないですけど、ディフェンスの質は栃木の方が上だったと思います。全員で守るという意識はどのチームよりも高かったかなと。相手の長所を消すのがうまくて、自分たちのやりたいことがあまりできなかったですし、僕自身ノーマークでシュートを打つことがほとんどできませんでした。ドライブした時の寄せもすごく速かったですね。あと、誰が出ても戦力が落ちないところも栃木の長所だと思います。誰がエースというのはなく、全員バスケを徹底していて、それぞれが自分の役割を果たしていました。

――シーズン開幕時に比べ、シーホースがチームとして成長した部分は?
比江島 ディフェンスは良くなったと思います。みんながよりプレッシャーを掛けられるようになり、タフショットを打たせられるようになったかなと。僕自身もそうですし他の代表選手も、新しいコーチ(ルカ・パヴィチェヴィッチ/テクニカルアドバイザー)に指導してもらいディフェンスの意識が変わりました。それがチームにも浸透してきて、全体的に良くなったと思います。

――プレースタイルも少し変わった?
比江島 うーん、他のみんなは前からディフェンスをやってましたけど、僕はこれまでディフェンスに力を入れる方ではなかったので(笑)、ちょっと変わったかもしれないですね。出場時間が長い僕がディフェンスをがんばることで、チームのディフェンス力も上がったかなと。

――確かに前半戦に比べ、後半戦はディフェンスでの貢献も大きかったように思います。
比江島 周りからもそう言ってもらえるので、それが自信にもつながっていますね。

――具体的にどんな点を意識していますか?
比江島 ボールをもらわせないようにする動きだったり、ピックの後のヘルプだったり。ピックに対するディフェンスをこれまでほとんど教わっていなかったので、やっていて楽しさもありますね。もちろんディフェンスの指導は受けてきたんですけど、代表のコーチはかなり細かく教えてくれるので本当に勉強になります。

――シーホースはタイトルを十分に狙えるチームですが、あえて足りないところを挙げるなら?
比江島 うーん、体力的な部分ですかね。試合数が増えた中でずっとスターターで出続けて、終盤戦は試合の最後にバテることが多かったので。素晴らしい選手がそろってますし、メンタル的なところもあると思うんですけど。栃木戦も勝てるチャンスが目の前にありましたし、僕の判断ミスもそうですけどメンタル的にいい状態であれば勝てたと思います。

――ディフェンス以外に個人として成長できた部分は?
比江島 ピックの使い方の幅は広がったと思います。これも代表で学んだことなんですけど、代表は新しいコーチを迎えて間違いなくプラスになりましたし、スキルコーチも新しく入ったことで選手個々のスキルも上がっていると思います。

――今シーズン対戦した中で一番印象に残っているチーム、選手は?
比江島 アルバルク(東京)との対戦は毎回楽しみでした。トヨタ時代からのライバル関係もありますし、(ディアンテ)ギャレット選手や田中大貴選手などレベルの高い選手がそろっていて、自分の実力を試せる相手だったので。マッチアップして楽しかったのはギャレット選手です。日本人にはない独特のリズムと技を体感できてすごく楽しかったです。

――ギャレット選手の特にすごいと感じるところは?
比江島 左右の幅ですね。腕が長くて移動範囲が広いんですよ。ボールの扱い方やつき方、フェイクもうまい。スピードも速くなさそうに見えて、瞬時のスピードはめちゃくちゃ速いですし。

――東アジア選手権が終わるとオフに入ります。予定は決まっていますか?
比江島 何も決まってないです(笑)。これまであまり長期のオフをもらったことがなくて、どう過ごすか全く想像がつかないですね。うーん、旅行には行きたいかなと思ってるんですけど。

――旅行はよく行くんですか?
比江島 全然行ってないですね、隣りの県ぐらいです(笑)。優勝旅行でハワイに行ったことはありますけど、完全なプライベートではないですね。キレイな海が好きで、ハワイもそうですけど、海外の海があるところに行きたいです。

――来シーズンはどんな1年にしたいですか?
比江島 ワールドカップ(2019年FIBAバスケットボール・ワールドカップ)予選が始まるので、そこに照準を合わせながらやっていきたいです。今シーズンは自分にもまだ伸びしろがあると気付かされたので、これからもどんどん新しい技にチャレンジしてもっと成長できる1年にしたいですね。

――結果には満足できていないけど、成長できたという実感はあるんですね。
比江島 そうですね。成績やスタッツには満足していないですけど、今こうやって振り返ると、自分自身成長できましたし、充実したシーズンだったと思います。

モバイルバージョンを終了