スターティングファイブに名を連ねるはずのキャプテン、篠山竜青は負傷によりこの日はベンチ外だった。代わって司令塔を任されたのは藤井祐眞。普段は篠山のバックアッパーを担う26歳は、日本代表招集歴もある実力派のポイントガードだ。
前日に行われた京都ハンナリーズとの第1戦(85-80)は15得点に加え4スティールと、持ち味であるアグレッシブなプレーで勝利に貢献。続く第2戦でも初っ端からエンジン全開だった。全速力でコート狭しと走り回りながら、タイトなディフェンスでスティールしたり、ラインを割りそうなルーズボールに飛びこんだり、エネルギッシュなプレーで観衆を沸かせた。
オフェンス面ではピック&ロールやパスムーブで連動性を高め、5つのアシストを決めるなど1番としての役割を十分に果たした。チームも苦戦を強いられながら77-73で白星を獲得。もっとも、自身の点数は満足できるものではなかった。「最近シュートのパーセンテージが良くなくて、今日も決めきれなかった」。2日目はフリースローこそ3分の3だったが、2ポイントは7本試投で2本成功、3ポイントは4本打って1本も入らなかった。フィールドゴール成功率はどちらもシーズンアベレージを下回る数字で、7得点にとどまった。
もともと得点力の高い選手だけに、調子を取り戻せば対戦相手の脅威になるだろう。本人もリーグ制覇を視野にそこを課題に挙げる。「プレーオフ(チャンピオンシップ)ではシュート1本1本が大切になる。特にフリーでは確実に決められるようにしないといけない」
激しい順位争いを繰り広げるレギュラーシーズン終盤戦、しかも「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」に進出する難敵を迎える中、篠山の負傷というアクシデントにより巡ってきた先発出場の機会を、藤井はどう捉えていたのか。「チームをまとめる部分はクリさん(栗原貴宏)や辻(直人)さんに任せて、自分はいつもどおりディフェンスなどでチームにエナジーを与えようとコートに入った」。北卓也ヘッドコーチからも特別は指示はなかった。「ミーティングの最後に『竜青の分もがんばろう』という言葉はあったけど、あとはいつもと同じような内容だった」
北HCによると、第2戦終了時点で篠山は精密検査を受けておらず、負傷状況は判明していないという。キャプテンである篠山が長期離脱となれば、そのダメージは計り知れない。藤井もそれを痛感する。「竜青さんはリーダーシップがあり、コート内外で存在感がある。プレー面では勝負どころで強さを発揮するし、常に考えながらプレーしていて、悪い流れの時はみんな集めて的確なアドバイスをくれる」
2戦目での藤井の出場時間は34分15秒。接戦となったことで出番が増えたわけだが、これは背番号0への信頼の厚さを示しているとも言えるだろう。藤井はコートインする際、こう思考している。「竜青さんと代わって出る時にどのようにして流れを変えるかを考えている。得点が入らない時の崩し方だったり、ペースが上がらない時のディフェンスの仕方だったり。セカンドユニットは自分が引っ張ろうという自覚を持ってプレーしている」。セカンドユニットの枠を飛びだし、重責を託された藤井は特長であるアグレッシブさを発揮、チームを後押しして貴重な勝利をもたらした。篠山とはまた違ったゲームメークができるオーガナイザーは、タイトルを懸けた戦いでもキーマンの1人となるだろう。
文=安田勇斗