【Bリーグ開幕特集】シーホース三河①シーズン展望「“常勝軍団”の称号は譲らない」

常勝軍団の真価が問われるシーズン[写真]=B.LEAGUE

3シーズン目の開幕を目前に控えたBリーグ。過去2シーズンで得た成果、反面浮き出てきた課題、その両者を昇華していくことでクラブはさらに進化を遂げていく。比江島慎橋本竜馬という主力を移籍で欠いたシーホース三河だが、今シーズンは新たなチームに生まれ変わろうとしている。“常勝軍団”三河は今シーズンも健在だ。

取材・文=山田智子

 2年連続で最速地区優勝を果たした“常勝軍団”シーホース三河は、不動のスターターだった橋本竜馬(現琉球ゴールデンキングス)と比江島慎(現NBLブリスベン・ブレッツ)という大きなピースが抜け、正念場のシーズンを迎えている。

 “新生”三河の初陣となった「B.LEAGUE EARLY CUP 2018 TOKAI」。圧巻の活躍を見せたのは、絶対的エースの金丸晃輔だ。2年連続でベスト5に輝いた唯一無比のスコアラーは「橋本、比江島と僕の3人でやっていたオフェンスがなくなるのは僕にとって痛い」と話すも、準決勝の茨城ロボッツ戦では3ポイントシュート3本を含む19得点、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの決勝ではゲームハイとなる28得点をマーク。得意のキャッチ&シュートだけでなく1on1で打開するなど更なる進化を見せつけた。

エース金丸と司令塔生原のコンビネーションに期待[写真]=B.LEAGUE


 昨シーズンはB1で唯一、得点、アシスト、リバウンドの3部門でトップ10に入った、41歳の桜木ジェイアールも元気一杯なのも頼もしい。攻撃の起点となり、茨城戦では14得点12リバウンドのダブルダブルを達成。帰化選手が日本人と同じ扱いになる今季は、益々大きなアドバンテージを持ちそうだ。

 金丸、桜木が健在を示したことはファンの不安を拭うのに十分だった。しかしそれだけでは長いシーズンを戦い抜けない。主力2人の抜けた穴を埋めるだけではなく、さらにバージョンアップさせて優勝というパズルを完成させるには、「若手の成長」と「外国籍選手の得点力」というピースが不可欠だ。

 橋本が抜けたポイントガードのポジションには、アーリーカップの2試合とも栃木ブレックスより加入した生原秀将がスターターに抜擢された。

「三河はインサイドの強さと日本人の外角シュートの確率の高さが印象的。自分は得点を取る力もあるので、インサイドとアウトサイドのバランスがうまく保てると思う」と語る若き司令塔は、守備では大柄な選手にも臆せずぶつかり、攻撃ではつなぎ役に徹しながらも、機を見てリングにアタックするアグレッシブさで早くもファンの心を鷲づかみにした。

41歳の桜木は相変わらずの頼もしさを見せている[写真]=B.LEAGUE


 円熟のハーフコートオフェンスは三河の代名詞とも言える大きな武器だが、そこに偏重するあまり、重い展開に陥ることがここ数年の課題だった。鋭いドライブでゴール下に切り込む生原や森川正明、相手の良さを消すタイトな守備が光った日本代表候補の西川貴之らの若い力が躍進すれば、昨季から目指してきた「堅守からの速い展開」への進化を加速させられるだろう。

 オンザコートルールが変更になり、どのチームも戦力における外国籍選手の比重が高まっている今季、三河は超重量級センターのバッツに加え、NBA経験を持つ2人の外国籍選手を新たに獲得した。

 茨城戦で先発したパワーフォワードのグラント・ジェレットは、「インサイドもアウトサイドも、どこからでも得点できるのが自分の特徴」。挨拶がわりに破壊力抜群のダンクを叩き込むと、ポストプレーや3ポイントシュートと多彩なスコアリングテクニックで26得点の活躍、昨年以上の得点力を期待できる。

アーリーカップでは多彩な得点力を披露した[写真]=B.LEAGUE


 スモールフォワードのジェームズ・サザランドは「持ち味はシュートの柔軟さ。ドライブや速いペースでボールを運ぶのも好き」と話すオールラウンダー。アーリーカップでは“サザランドステップ”で相手をかわしてゴールに切り込み得点を重ねただけでなく、相手の速攻をブロックショットで阻止するなど献身的なプレーでチームを助けた。

 鈴木貴美一ヘッドコーチは「3人をローテンションする」と明言。今季より中地区に移った、帰化選手のニック・ファジーカスを擁する川崎ブレイブサンダースとの対戦を想定し、帰化枠の桜木と2人の外国籍選手の同時起用する“オンザコート3”も試みた。

鈴木HCの選手起用にも注目[写真]=本美安浩


「帰化選手や代表クラスの日本人ビッグマンのいるチームに対しては、“オンザコート3”の時間帯が絶対に必要になる。茨城戦はうまくいったが、名古屋D戦はかえってマイナスだった」と最適な組み合わせを模索中。タイプの違う3人の外国籍選手をどのように起用していくのか、指揮官の手腕の見せどころだ。

“新生”三河はまだまだ発展途上だ。しかし、それぞれのピースが大きく成長し、それを様々に組み合せることで、想像を超える絵を描ける可能性を十分に秘めている。“常勝軍団”の称号は簡単に譲るつもりはない。

モバイルバージョンを終了