第4クォーター残り1分59秒で63-63の同点。そこから逆転に次ぐ逆転で、アルバルク東京はサンロッカーズ渋谷を相手に勝ち星を拾った。チームを救ったのはアレックス・カーク。昨シーズン出場44試合目に通算100ダンクを達成し、その後も豪快にボールを叩きこみ続けた“ダンク王”だ。
65-66の1点ビハインドで迎えた残り52秒、カークは馬場雄大のアシストからジャンプシュートを放ちネットを揺らした。さらに、相手に逆転を許すも、残り24秒、田中大貴のドライブに合わせてペイントエリアに進入しバスケット・カウントを獲得。プレッシャーの掛かるフリースローも決めて70-68とSR渋谷を突き放した。
18秒後には再びフリースローを2本決め72-68。打つ前に笑顔を見せたのは「(SR渋谷のロバート)サクレに冗談を言われたから」とのこと。サクレは動揺を誘ったのかもしれないが、カーク本人はそのおかげでリラックスすることができ、決めることができたという。そして目が離せない好ゲームは、最後に田中のフリースローで1点を加えたA東京が73-71で逃げきった。
白星スタートと結果を残したものの、昨シーズンのBリーグチャンピオン、A東京は開幕戦で大方の予想を覆す大苦戦を強いられた。SR渋谷が同じ渋谷区をホームタウンとするライバルとはいえ、開幕前のアーリーカップ2018関東の準決勝では78-33と完勝した相手だ。アーリーカップでは、開幕戦で28得点を挙げたライアン・ケリーが不在だったが、ケリーが加わるだけでここまで追いつめられるとは想像していなかっただろう。
コンディションの問題はあった。A東京は4日前までFIBAアジアチャンピオンズカップに参戦し、タイから帰国してまだ3日しか経っていなかった。カーク自身も現在のコンディションについて「シーズン後半戦ぐらいの疲れがあり、疲労が溜まった状態での試合だった」と明かす。
それでもカークはこの試合で総得点の4割に迫る27得点を挙げてチームに勝利を呼びこんだ。「今日は自分がオープンになる機会が多かっただけ。相手のディフェンスによっては違う選手が得点を取ることになる」と、本人は控えめに答える。第2クォーターには代名詞であるダンクを2本決めた。速攻から決めた1本目は、「パスを出した(竹内)譲次からいいパスが返ってきた」。2本目のアリウープは「大貴のアシストが良かった。どちらもチームメートが演出してくれたダンク」とここでも謙遜するが、その存在感は昨シーズンから群を抜いており、開幕戦でも強力な得点源であることを印象付けた。
そしてこのゲームのラストを彩った連続ポイントは、「自分のルーティン、自分のリズムでいつもどおりに打った。それが今日は入った」と振り返った。その「いつもどおり」が難しいシーンが続いたが、重圧はあまり感じないタイプだというから心強い。
A東京は前途多難にも見える船出となったが、チームには竹内、田中、馬場の日本代表選手を筆頭に、カークやジャワッド・ウィリアムズ、初戦では持ち味を発揮できなかったが新加入のミルコ・ビエリツァなど頼れる外国籍選手がそろっている。メンバーの入れ替えがほとんどなく、チームのベースが整っていることも大きなアドバンテージだ。初戦での大苦戦を「不安」と捉えるか、それとも勝ちきる強さを見せ、「安心」と見るべきか。竹内やビエリツァがややおとなしかったこと、ウィリアムズが控えていることなど、まだ余力があると考えれば後者と言えるだろう。ルカ・パヴィチェヴィッチ体制2年目、成熟したディフェンディングチャンピオンのさらなる飛躍に期待したい。
文=安田勇斗