Bリーグ2018-19シーズンよりスタートした、ユーザーが対象ショットの中からナンバーワンタフショット『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』を決める、バスケットボールキングとカシオ計算機株式会社による共同企画。第2回目(第7節~第11節対象)は渡邉裕規(栃木ブレックス)が最多票を獲得した。
そこで今回、青野和人ヘッドコーチ(越谷アルファーズ)が、どのようにしてこの一発が生まれたのか、相手やチームメートとどのような駆け引きがあったのかなど、指揮官ならではの視点で解説してくれた。
青野和人ヘッドコーチはこう見る!
第4クォーター残り2分2秒、サイドアウトオブバウンドから竹内公輔選手がボールを受け、渡邊選手がトップで手渡しパス(ハンドオフ)をもらうと、ライアン・ロシター選手との2メンゲーム(ボールスクリーンプレー)。右に広がるようにドリブルを2回突きながら、ロシター選手にパスも出せる態勢で一瞬ディフェンスを「硬直」させ、早いリリースの3ポイントショットを見事に決めきった。
2ケタリードを巻き返したい栃木だったが、川崎の“ビッグ3”の強烈なペイントアタックに対してジェフ・ギブス選手がファウルトラブル。なかなか中を攻められない中、バーノン・マクリン選手にマッチアップされているロシター選手を中心にゲームを組み立てている。
このビッグショットプレーの1つ前、同2分8秒から渡邊選手は相手の弱いところを冷静に見抜き、アップダウンの激しい中で一旦ゲームを落ち着かせ、プレーコールをして駆け引きを始めた。
当然相手はスカウティング万全で、セットコールに対して藤井祐眞選手が渡邊選手に立ちはだかる。その執拗に動きを止めるディフェンスからしっかりとファウルをもらいゲームが止まるが、サイドからのプレーでも同じセットプレーを選択した。
ニック・ファジーカス選手がディフェンスで外まで出てこないため、セットプレーのエントリーはマッチアップされている竹内選手からスタート。ドリブルを残した状態でボールスクリーンをもらうと、ドリブルした状態でスクリーンをもらう時に比べて攻めの選択肢が増える。
先ほどの表現の「硬直」とは、180センチの渡邊選手に対して、簡単にブロックショットできる長身(208センチ)のマクリン選手はボールマンも止めたいが、3ポイントラインにポップしたロシター選手に戻らなければという選択の迷いである。
ゲームの終盤、ここで1本欲しい時に相手の弱点をつきながら自らゲームを決めにいく素晴らしい判断。このショットで乗った渡邊選手は、この後もダメ押しの3Pを決めた。
1年前には一度引退し、心身ともに完全に戻っていない中、劇的な復活を遂げた選手が今や田臥勇太選手が欠場の中でリーダーシップを発揮し、栃木の大躍進の立役者としてチームをけん引している。終わってみればフリースローが1本もないのに、開幕戦以来の20点オーバー(うち3ポイントが7本中5本)5アシストと圧巻のパフォーマンスを見せた。