実際にプレーする選手の感覚と、プレーを見て受けた印象が大きくズレていることがある。3月23日、アルバルク東京戦で10得点を挙げた名古屋ダイヤモンドドルフィンズの安藤周人がまさにそうだった。
第1クォーター開始早々、3-0とリードした場面で、安藤は幸先良く3ポイントシュートを決め、さらに残り4分4秒、13-13と同点の場面で再び長距離砲を沈めた。どちらもフリーだったが、決めきる力はさすがだった。
第2、3クォーターでは得点こそなかったものの、第2クォーター残り3分51秒にはヒルトン・アームストロングのアリウープをお膳立て。追いかける展開で迎えた第4クォーター残り6分36秒に62-68と点差を縮めるドライブからのレイアップ、残り5分5秒には66-68と2点差に詰め寄るフローター気味のレイアップを決め、トータル10点をマークした。
チームは70-82で敗れたものの、得点はいずれもチームを勢いづけるもので、安藤自身のパフォーマンスはまずまずのように見えた。しかし試合後にプレーの出来を問うと、「あまり良くなかった。言い訳にはしたくないけど、シーズン後半に入って疲れも出てきた」と苦い顔で振り返った。
序盤には立て続けにアウトサイドシュートを決めたが、「相手のディフェンスのスイッチが入っていなかっただけで、シュートタッチは良くなかったし、体も流れていた。今日だけでなく、最近の自分のパフォーマンスには満足していない」。チームも出だしこそ上々だったが、徐々にペースを握られた。「アルバルクはタイトな守備で、我慢強く戦っていた。自分が欲しいタイミングでボールがもらえないことが多かったし、自分たちもああいうディフェンスをしていかないといけない」
そうした状況から、第4クォーターではジャンプシュートではなくレイアップを選択した。「外のシュートが良くなかったから、中で攻めることを意識した。あの時間帯で簡単に外のシュートを外すと勢いを失うし、結果的に2本とも決められて良かった」
1試合平均14.2点を記録していることを踏まえれば、確かにベストの調子ではなかったかもしれないが、アルバルク東京戦でも28分3秒のプレータイムを与えられた。それが何を意味するかは本人も理解している。「ウイングマンを使うコールが多く、ガードが自分をうまく活かしてくれる。梶さん(梶山信吾ヘッドコーチ)も自分を使えと言ってくれるし、試合終盤の点差が近い時や、追いあげる場面で自分を起点にしてくれるので、その期待にもっと応えたい」
そのプレーは、日本代表のフリオ・ラマスHCの目にも留まる。昨年11月に続き今年2月も、FIBAバスケットボールワールドカップ2019アジア地区2次予選の、24名の日本代表候補選手に選ばれた。最終メンバーには残れなかったが、「ワールドカップ本大会の前にいろいろな選手を試す機会があるはずなので、そこに呼ばれるようにがんばっていきたい」と前を向く。
代表入りのためにもまずはBリーグで結果を残す。「仮にチャンピオンシップに出られたとしても、このままでは一つも勝てない。自分もチームももっと泥臭く、若いチームなのでハッスルプレーで(レギュラーシーズンの)残り12試合を戦いたい」。好調時はどれほどのパフォーマンスを見せてくれるのか。今日見たイメージを覆すだろう、安藤周人の本領発揮が楽しみだ。
文=安田勇斗