竹内公輔の粘り勝ち――。試合終了のブザーが鳴った直後、そんな言葉が頭に浮かんだ。
3月12日、さいたまスーパーアリーナで行われた宇都宮ブレックスvsアルバルク東京の「第96回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」ファイナルラウンド準決勝は、最終スコア64−54で宇都宮が制した。
決勝行きをかけた一発勝負は、互いの強みである守備が光り、予想どおりとも言えるディフェンス合戦。宇都宮は7点リードで試合を折り返すも、第3クォーターでは相手にペースを握られ同クォーター残り3分27秒で同点(38−38)に追いつかれてしまった。それでも、ここからジェフ・ギブスとテーブス海の得点で再びリードを作ると、第4クォーター序盤には15点まで点差を広げ相手を振り切った。
宇都宮は計17得点7リバウンドをマークしたライアン・ロシターを筆頭に、ジョシュ・スコットが10得点8リバウンド、ベンチスタートのギブスも10得点5リバウンドを記録。この3人のインサイド陣が攻防に渡ってチームをけん引する働きを見せた。
だが、第3クォーターに訪れたピンチを救い、流れを引き戻したのは竹内公輔だったのではないだろうか。
先述した同点の場面でコートに立っていたベテランパワーフォワードは、インサイドでゴリゴリと押し込んできたケビン・ジョーンズからトラベリングを誘い、オフェンスリバウンドからシュートを狙ったアレックス・カークのボールをスティール。この2つのプレーは、決められていたら逆転を許していたシチュエーションだった。
その後も竹内は「リバウンドを取られるとまずい状況だったので、そこは特に意識していました」と、我慢の第3クォーターが終わるまで身を犠牲にしてゴール下を死守。ディフェンスリバウンドをもぎ取り、小島元基のレイアップを防ぎ、たとえリバウンドを取り切れなくてもティップしてマイボールにつなげた。
マイナス2点のピンチをプラス2点に変えた竹内の働きがA東京の反撃を食い止め、最終クォーターで突き放すことができた大きな要因となったと言えるだろう。
「去年は決勝まで行けず、一昨年は決勝で負けてしまったので、決勝に行けてホッとしてます」と、試合後は安堵の表情を見せた竹内。約11分のプレータイムで得点はフリースローの1本のみとなったが、2つのオフェンスリバウンドを含む5リバウンド。この出来に関しても、「リバウンドに関しては『5人全員でディフェンスリバウンドを取れ』と、いつも練習前のミーティングで言われ続けていますし、今日の54失点という出来は良かったと思っています」と手応えを感じていた。
宇都宮の安齋HCは勝因を第3クォーターのディフェンスと言及
指揮を執る安齋竜三ヘッドコーチも、勝敗を分けたポイントをこう話す。
「東京さんとやるときは40分間どちらが高い遂行力を維持できるかという勝負なので、それが40分通してしっかりできたことが勝因ではあると思います。けど、ポイントとしては第3クォーターの追い上げられた時、『逆転されたらタイムアウトを取ろうかな』と思った場面で逆転されずにディフェンスを頑張って、オフェンスでもジャンプシュートを決めてくれたところで少しずつ点数が離れたことがポイントだったかなと思います」
チームを救った竹内は「アルバルクのディフェンスもすごく良かった」と、64点に留まったオフェンスについて言及したが、「ディフェンスやリバウンドといった自分たちのブレない武器が崩れなければ勝てると思っていましたし、ディフェンス合戦で勝てたことは良かった」ともコメント。
13日の決勝の相手は川崎ブレイブサンダース。竹内が言う初年度のBリーグファイナルでも相まみえた相手と、今度は天皇杯初制覇をかけて激突する。
「初年度にBリーグで優勝して以来、優勝していないので、このチャンスをものにしたいと思います」
いぶし銀の活躍でチームに悲願のタイトルをもたらすか。決勝戦も宇都宮の背番号10に注目だ。
文=小沼克年