第1クォーターを終えて22−11。川崎ブレイブサンダースとシーホース三河による「第96回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」ファイナルラウンド準決勝は最初の10分間で明暗が分かれ、川崎が12点差の勝利で決勝進出を果たした。
その第1クォーター、川崎は開始1分からジョーダン・ヒースの連続3ポイントシュートで試合を動かすと、藤井祐眞も続いて8−0のランに成功。ヒースは同クォーターだけで4本の3ポイントを射抜き、「チームで作ったチャンスをJ(ヒース)がよく決めてくれました」と佐藤賢次ヘッドコーチも評価した。
一方、出鼻をくじかれた三河は相手の守備を崩せず、ダバンテ・ガードナーの個人技で得点するのがやっとという状況。第2クォーター以降は互角のスコアに持ち込んで一時6点差まで詰め寄ったが、逆転するまでには至らなかった。
鈴木貴美一HCは「第1クォーターでフワッと入ってしまって、ヒースに予定外に3ポイントを入れられすぎてしまいました。後半は修正して相手に1本しか3ポイントをやられなかったので上手くいきましたけど、みんな硬くなっていたのか、とにかく1クォーターの入りがあまりにも悪かったです」と試合を総括。序盤の出来に対し、悔しさをにじませた。
「試合前にチームで積み重ねてきたこと、個人個人が努力してきたことを、明日のことを考えずに今日全部出し切ろうと話しました。それを一人一人が体現してくれたと思います」
佐藤HCが攻守両面において選手たちを称えた一方、キャプテン・篠山竜青は試合後、開口一番に「ディフェンスの勝利」と言い放った。その言葉通り、この日はリーグ屈指の攻撃力を誇る(現在のリーグ戦では1試合平均83.8得点)三河相手にわずか67失点。40分間、自分たちのバスケットを遂行し内容的にも納得できる勝利をつかんだ。
昨年のリベンジに燃える川崎。“サンダースファミリー”と歓喜の瞬間へ。
川崎にとっては2年連続となる決勝戦の舞台、今回の相手は宇都宮ブレックスだ。その宇都宮も準決勝ではアルバルク東京を54点に抑え込んで勝利している。
「本当にリーグ随一のディフェンス力を誇るチーム。いろんなタレントが揃っていますけど、最後はディフェンスやリバウンド、ルーズボールの部分で勝つチームという印象です。その中でもライアン・ロシター選手が柱かなと思うので、彼を乗せないことが1つキーになるのかなと思います」と篠山は、決勝の相手を分析する。
前回大会を振り返れば、篠山はケガの影響で欠場を余儀なくされた。加えて、チームとしてはマティアス・カルファニ、藤井、鎌田裕也(現・仙台89ERS)の3選手も欠いた中でサンロッカーズ渋谷との激闘を繰り広げて見せた。
その試合には惜しくも敗れたものの、必死で戦う仲間の姿に篠山の心は大きく動かされたという。
「去年はみんなの頑張りに本当に感動しました。結果は出ませんでしたけど『明日からリハビリ頑張ろう』と思えましたし、プロスポーツのあるべき姿というか、プロチームとしてやらなきゃいけない仕事をやりきった大きな大会が去年の天皇杯だったと思います。今回はそこに自分も立てていて、改めて試合を楽しめていますし、明日また自分が見てくれている方々へ何かを与えられるようなプレーを楽しみながらできたらいいなと思います」
千葉ジェッツ、三河を退けて決勝まで上り詰めた川崎は、直近のリーグ戦10試合でも9勝1敗と好調をキープ。篠山自身も現在のチーム状況に充実感を感じており、昨年のリベンジ、Bリーグ創設後初の栄冠へ向けても「何も不安はない」と自信をのぞかせる。
「もう楽しむだけです。みんなで明日を楽しみたいと思います」
“みんな”というのは、言うまでもなくサンダースファミリー全員のことだ。
行こう、歓喜の瞬間へ!
文=小沼克年