ライアン・ロシター、文句なしのMVPだ。「B.LEAGUE EARLY CUP 2019 KANTO」で宇都宮ブレックスを優勝に導いた。
14日から3日間に渡り、船橋アリーナで開催された関東アーリーカップ。一発勝負のトーナメントと言えど、レギュラーシーズン開幕前ということもあり、各チームのヘッドコーチたちは「結果よりも内容を重視」という言葉を異口同音に語っていた。ケガ人やまだコンディションが整っていない選手たちも多く、サンロッカーズ渋谷、川崎ブレイブサンダースは8人で試合に臨むなど各々が“無理をしない程度”に大会に臨んだことだろう。
そんな中、「どんな試合も自分は100パーセントの力で戦う」と頼もしい言葉を発したのがロシターだ。
宇都宮は16日に行われた決勝戦でアルバルク東京を82-78で撃破。相手の3連覇を阻止するとともにアーリーカップ初優勝を飾った。最大の勝因は第4クォーターでディフェンスの強度を上げ、この10分間を29-11としたことであり、ロシターも試合後にこう述べている。
「アルバルクはしっかり作りあげられたチームなので、彼らから崩れていくことはない。自分たちから仕掛けないと向こうから崩れることはないので、自分たちがディフェンスの激しさをより上げて仕掛けようという話をした。それが上手く機能したからだと思います」
この日のオフェンスでは、5本中4本の3ポイントをマークしたジェフ・ギブス、試合終了残り10秒に値千金の決勝点を決めた渡邉裕規の活躍にスポットライトが当たったかもしれない。しかし、MVPに選ばれたことが物語るように、この3日間の攻撃を引っ張ったのはロシターだった。
横浜ビー・コルセアーズとの初戦では18得点5リバウンド5アシストを記録し、準決勝の千葉ジェッツ戦では両チーム最多の31得点14リバウンドを叩きだした。
ちなみに、この宇都宮vs千葉の一戦から大会自体のボルテージが上がったようにも感じた。14日の初日はホームの千葉の試合がなかったためか、観客もまばら。試合を観てもどこかプレシーズンマッチのような様子見の雰囲気が漂っていた。しかしこの一戦は、ケガで離脱していた千葉の富樫勇樹がサプライズとも言える復帰を果たしたからなのか、ライバル同士の対戦だからなのか、空気は一変。ゴール下では激しい体のぶつけ合いがあり、大活躍したロシターも相手に激昂する場面もあった。聞けば「自然と熱くなった」という。
そして、決勝戦でもゲームハイとなる23得点10リバウンドをマークしたロシター。3日間をとおして見ても、他チームを含めたどの選手たちよりもコンディションが整っていた。
今年のオフシーズン、宇都宮は比江島慎、竹内公輔が代表活動でチームを離れたこともあり5対5の練習ができなかった。その状況の中でロシターは、主にフィジカルの強化に取り組んだ。「いろんなウェイトトレーニングや柔軟性や関節の部分も高めて、自分の体がシーズンをとおして戦い抜けるようにした結果、今回のトーナメントでも上手くいったと思っています」。
「自分は1試合とおして、そんなに休まなくてもハードにプレーし続けられる。コートをしっかり走り抜けることが自分の強さとして誇りを持っているので、そのためにトレーニングや食事にも気をつけています。自分ももう30歳(笑)。これからも自分のプライドを持ってしっかりやっていきたいと思います」
9月14日のアーリーカップ初日は、ロシターが30歳を迎えた誕生日でもあった。アーリーカップ初優勝、そしてMVP獲得は、2日遅れの自分へのプレゼントだ。
文=小沼克年