無観客開催でBリーグ再開。注目の東地区上位対決は宇都宮が遠藤の3ポイントなどで勝利

宇都宮の遠藤祐亮は3ポイント7本を含む26得点をゲット [写真]=B.LEAGUE

「コロナニショウリ! GOJETS」の“イス文字”が選手を鼓舞

普段は5000人を超える観客席に「コロナニショウリ!GOJETS」のイス文字 [写真]=B.LEAGUE


 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、第24節から第27節までの各チーム6試合が延期となっていたB1リーグが、第28節から第32節までの無観客開催によるリーグ戦再開を決定。その初日となる3月14日、船橋アリーナでは千葉ジェッツ宇都宮ブレックスの東地区上位決戦が行われた。

 1試合平均5000人を超える来場者に非日常の空間を提供している千葉の場合、無観客によるその落差がとりわけ大きくなることは想像に難くない。しかし、フロントスタッフは選手のモチベーションを下げないよう、コートから見える範囲は極力従来通りに設営し、チームカラーの赤を強調。SNSでファンから募った選手へのメッセージボードもコートエンドに設置した。加えて2階席には「コロナニショウリ! GOJETS」の人文字ならぬ“イス文字”を施し、マスコット総選挙2連覇中のジャンボくんやチアリーダーSTAR JETSもパフォーマンスを披露。動画配信サービスの視聴者も意識した会場作りは、千葉のホスピタリティーの高さを表すものだ。

 肝心の試合は、地区優勝を争うカードにふさわしく、前半は接戦となった。開始直後は、遠藤裕亮の3本の3ポイントで宇都宮が先制するが、千葉も小野龍猛ジョシュ・ダンカン田口成浩の3ポイントですかさず追いつく。第2クォーターも両者譲らず、千葉はダンカンとニック・メイヨ、宇都宮は渡邉裕規ジャワッド・ウィリアムズが連続得点し、42-40と宇都宮の2点リードで折り返す。

千葉のニック・メイヨは約21分の出場で22得点の活躍 [写真]=B.LEAGUE


 しかし、後半に入ると宇都宮が地区首位の地力を発揮し、持ち前のディフェンスで千葉のターンオーバーを誘発して速攻を連発。千葉はタイムアウトで立て直そうとするが、ライアン・ロシターの3ポイントや比江島慎のフローターなどで逆にたたみかけられ、点差は最大13点に開く。第4クォーターには宇都宮も立て続けにターンオーバーを犯す時間帯があり、千葉は3点差まで詰め寄るが、宇都宮は要所でゾーンディフェンスも駆使してそれ以上の追撃を食い止めた。終盤は、すでに3ポイントを6本中5本決めていた遠藤に決定打となる2本の3ポイントも飛び出し、最終スコア88-80で再開初戦は宇都宮に軍配が上がった。

様々な違和感を振り払って選手はプレー

試合後、千葉の大野HC(右)は複雑な心境を吐露。安齋HCは選手の姿勢を評価した [写真]=B.LEAGUE


 試合後、千葉・大野篤史ヘッドコーチは「スポーツイベントが軒並み中止になる中、選手がしっかりゲームに臨んでくれたことが一番良かった」と語りつつも、「この社会情勢で、コンタクトの多いバスケットボールが再開しても良いのかというところで、選手たちに『いいからやれ』とは言えない」と複雑な心情を吐露。この状況下で試合に臨む難しさをのぞかせた。

 一方で宇都宮・安齋竜三HCも「お客さんがいない中でゲームの入りは少しふわふわした部分もあったんですが、選手たちはやるべきことにフォーカスしてくれた。見てくれる人に、自分たちが伝えられることがあると思うので、選手たちもそれを意識しながらやってくれたことが勝ちにつながったと思います」と、まずは選手の姿勢を評価。その上で「ケガ人が出なければ良いというのが一番だったが、お互いに出なかったので良かった」と胸をなでおろした。そして、無観客というイレギュラーな状況だからこそ「いつもファンの後押しがあって僕たちの良いところを出せているということはひしひしと感じました。でも、お客さんがいないからといってそのレベルを落としてはいけない」と決意を新たにする。

 試合後のコーチ同士の握手、選手同士のハイタッチもなく、取材に応じた選手も「違和感」という単語を口にする状況。先行きもまだ不透明だが、ブースター・ファンを勇気づけるためにも、選手たちは勝利を追求し続けなければならないということを再認識する良い機会だったと受け止めたい。

文=吉川哲彦

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