「ベスト4に入るためにやってきたので結果が出せてうれしく思います。土浦日大は力があるチームなので追いつかれるのも当たり前という気持ちで、チーム一丸となって40分間落ち着いてプレーできたのが良かったです」。北陸学院高校(石川県)の2年生エース、大倉颯太は土浦日本大学高校(茨城県)戦を終えて安堵の表情を浮かべた。続けてチームにおける自身の役割をこう語る。「得点については意識していませんが、チームに求められているのはエースとしての役割なので、自覚と覚悟を持ってプレーしています」
野々市市立布水中学校(石川県)時代に全国中学校バスケットボール大会で優勝。進学した北陸学院で1年次から活躍する大倉は、今秋にスポーツメーカー主催のアジアキャンプに参加し、ステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)とマッチアップする貴重な経験を積んだ。「生でしか感じられないドリブルの力強さやシュートを見て、以前よりもシュートの映像を見るようになった。カリーを意識しています」と語ったとおり、“和製カリー”よろしく、チームトップの34得点をたたき出し、東京体育館に詰めかけた観衆を魅了。安定したボールハンドリングから繰りだされるクロスオーバーや、センターの小室悠太朗とのピック&ロールも冴えわたり、次々と得点を重ねた。
もっとも、全中で大活躍した有望株は、県外の強豪校からの誘いで越境する可能性もあった。これを阻止したのは、石川県バスケットボール協会だ。厳密に言うと協会が打ちだした強化策が、大倉を県内に留める一つの要因となった。選手強化を支える協会が県内の優秀な高校生を対象にした全国初の奨学金制度を設け、大倉はこの奨学生制度の3名のうちの1人に選ばれた。また、石川県では2014年に男子の野々市私立布水中が全中を制覇し、今年の全国ミニバスケットボール大会でも木曳野ミニバスケットボールクラブが優勝するなど、県全体でジュニア層の躍進が目立っている。
北陸学院の濱屋史篤コーチは「ここまで来たのはいろいろな人たちの支えがあったからだと考えています。石川県バスケットボール協会としての育成に対する取り組み、県のサポートが大きいと思います。ベスト4に残った自分たち以外のチームには留学生がいると聞いています。明日は“留学生キラー”となれるようにがんばりたい」と、県を挙げての強化とサポートへの感謝の気持ちと、その期待に応えるべく力強く決意を語った。
地域が支え、地域が育てた選手が中心となってのベスト4進出。大倉と北陸学院の今後の戦いに注目したい。
文=村上成