決勝で戦った福岡第一高校(高校総体1/福岡県)と東山高校(高校総体2/京都府)の両校スターター10名の中で唯一の1年生だった。「先輩に付いていっただけ」と謙遜しながらも、松崎裕樹は8得点とチームトップの6リバウンドを記録。福岡第一は11年ぶり2回目のウインターカップ優勝を果たし、インターハイとの2冠を達成した。
松崎は、5月の練習試合でケガ人が出たことでチャンスをもらい、そこでのパフォーマンスが評価されてスタメンの座を射止めた。190センチの長身に加え、決勝でも物怖じしない強心臓を持ち、鋭いカットインでガンガン仕掛けていくフォワードだ。得意とするのは「ランニングプレー。パスをもらってからドライブを仕掛けたり、レイアップに持っていったり」、この試合でも重冨周希と友希のツインガードと好連係を見せた。
東山のエース、岡田侑大のマークを任されたことでも期待値の高さがうかがえる。息切れした終盤こそ次々に得点を許したものの、福岡第一が前半に7点のリードを作れたのも、松崎が最初の20分間で岡田をわずか3点に抑えたからだろう。後半は「来るとわかっていても止められなかった」と苦戦を認めつつも、ディフェンスでも必要最低限の仕事を遂行した。
憧れの存在は同じ長崎県出身の田中大貴(アルバルク東京)。田中の中学時代の恩師と知り合いで、以前からプレーを参考にしていた。確かにサイズや中に切れこむプレーは田中をほうふつさせる。しかし、松崎には田中のようなアウトサイドシュートはなく、この試合でも1本も打たなかった。「以前は打ってて、高校の最初の方は入ってたけど、インターハイ前から入らなくなって」と苦笑する松崎は、コーチや上級生のアドバイスを受けて3ポイントを控えているという。もっとも、尊敬するシューターに近づくために特訓は今も続けている。「ドライブだけだと背の高い留学生相手になかなか点が取れない。3ポイントを決められたら相手へのダメージも大きいし、自分としてももっと点が取れるようになる」
青と黄色の左右色違いの靴紐は、仲の良い先輩の小野絢喜とそろえたものだ。もともと白い靴紐だったが少し派手にしたく、自分から持ちかけて2人で合わせたという。その小野からも多くのものを吸収している。「絢喜さんはディフェンスがうまくて、勝負強い選手なのでそこを見習ってる」。また、決勝戦で同じコートに立った土居光からは「ミドルシュートやみんなに声を掛けるところ」を学んでいる。
優勝メンバーと言ってもまだ高校1年生。伸びしろは十分あり、目指す場所も高い。「Bリーグが始まって男子バスケットが盛りあがっていて、この先に東京オリンピックも控えている中で、自分も日本代表に食いこめるようにがんばっていきたい」。高校生活半年強の若者が、はるかに飛躍した目標を口にできるようになったのは喜ばしいことだ。数年前なら夢のような話も、昨今の日本バスケット界の活況ぶりもあり、大学からの日本代表入り、さらには高卒Bリーガーからの五輪出場といったルートにも現実味がある。
福岡第一で「ベンチに入れたらいいな」からスタートし、終わってみれば「ここまで来られるとは思っていなかった」と予想だにしなかった1年を過ごした。しかしこれも日々のトレーニングが生んだ結果だ。「練習すれば1年生でもこういう舞台に立てることを発信できた」。努力で成功をつかんだ松崎に賛辞を贈るとともに、さらなる成長を見届けていきたい。
文=安田勇斗