Bリーグ開幕に伴って注目度が増す男子バスケットボール界。2019年にはFIBAワールドカップ、翌2020年には東京オリンピックが控え、より一層の発展へ期待が高まるばかりだ。日本バスケットボール協会やBリーグは両大会、さらにその先を見据えて選手の強化に力を入れている。すでにアメリカの大学で活躍する渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大学)や八村塁(ゴンザガ大学)、日本代表に名を連ねる馬場雄大(筑波大学)などが台頭しており、それに続く超逸材、さらに可能性を秘めた“原石”もまだまだいる。ここでは『バスケットボールキング』推薦のスター候補生を紹介。今回は、先のウインターカップで母校を3位に導いた万能型フォワード、大倉颯太(北陸学院高校3年)のルーツとプレースタイルに迫った。
今から6年前、取材で訪れた石川県の野々市市立布水(ふすい)中学校で、コーチから「近隣のミニバスチームにすごい選手がいる」という話を聞いた。それが当時小学6年生の大倉颯太だった。
北信越の名門、布水中では1年生の秋より主力として活躍し、2年、3年と全国中学校バスケットボール大会(全中)に出場(全中は県代表でなく地方ブロック代表制なので、インターハイよりもさらに狭き門)。3年時にはシーズンをとおして無敗で全中を制覇した。
各チームで活躍する大倉と同学年の選手と話をすると、至るところで中学時代の彼の話題が出てくる。準優勝に輝いた都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(ジュニアオールスター)を含め、中学時代の大倉は対戦相手にそれだけの強烈な印象を与えるプレーヤーだった。
高校進学時は県外の強豪校を選ばず、兄の龍之介(東海大学2年)が所属する創部間もない北陸学院高校に進学。1年時のインターハイからレギュラーを勝ち取り、以来チームのエースの看板を背負っている。力みのない動きでドライブ、3ポイント、ポストプレーと自在にプレーし、184センチの身長からダンクを繰りだす跳躍力も備えている。昨年は2つの海外キャンプに参加し、ウインターカップでも3位という成績を出した。切れ長の目元と涼しげなルックスも相まって、世代屈指のスター性を感じさせる選手だ。
大倉は自らの性格を「負けず嫌いで短気」と分析。続いて「いいところはあまりないんですけど……」と口ごもりつつも、「周りを見ることはできます」と自信を持って答えた。優れたポイントゲッターには当然のように多くのディフェンスが集中するが、大倉は自分が行くべき場面、パスをさばいて仲間を活かす場面を判断し、適切なパスを出せる視野の広さもしっかりと備えている。
将来はBリーグや海外進出を視野に入れていると話しているが、今後のキャリアとそれに伴うだろうポジションアップ(コートの上に位置するポジションに転向すること。大倉の場合フォワードからガードとなる)を見越して、先を読む戦術眼、チームを盛りたてる影響力など、様々な能力を貪欲に養ってほしい。
ちなみに、コート上やインタビューの受け答えからクールな印象が強いが、兄の龍之介いわく「冷静に見せているけれど、実は心の中での葛藤が激しい」とのことだ。
文=青木美帆
写真=大澤智子