きっと引き締まった表情が少しずつほどけていく。両手で何度も涙をぬぐった。「勝てない試合じゃなかった。もっと力を出せればみんなの応援にも応えられたのかなと思って、悔しくて涙が出てきました」。福島東稜高校(福島県)のキャプテン佐藤翔太は、63-80で敗れた平成29年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)2回戦、桐光学園高校(神奈川県)戦の悔いを口にした。
小平崇総監督は今年のチームを「中学時代に活躍したり、ジュニアオールスターに出場したりした選手がいない中で、よく成長してくれました」と称える。佐藤も中学時代は地区大会止まりだったが、中学1年次に見た福島東稜の試合が忘れられず、入学を決めた。「楽しくバスケをしていて、自分のプレースタイルにも合ってると思いました」
入学当初は取り立てて武器のない選手だったが、小平総監督にシューターとしての素質を見込まれた。成果はなかなか現れなかったが、2年になって200本のシューティングを日課とし「最近になってようやく入るようになりました」と話す。
大一番となった桐光学園戦では6本の3ポイントを含めた21点の活躍。「何も考えず、無心で打った」という3ポイントシュートが苦しい時に決まり、満員の応援団の大歓声を受けた。しかし、「それで流れを持ってくることができれば良かったのですが、我慢できなかったのが申し訳ないです」と、口をついて出るのはやはり後悔の言葉だ。
2人の留学生を含めて個性の強い選手がそろい、キャプテン就任当初はチームをまとめるのに苦労した。「時間厳守」という習慣を持たない留学生は練習に遅刻することも多かったが、他のチームメートに練習を先に始めさせず「全員がそろわないと練習が始まらない」と2人を諭した。その結果が、チームとして全国大会初勝利となった1回戦の文星芸術大学附属高校(栃木県)戦につながった。
「対戦前は、みんなが『桐光が上だろう』と思っていたと思います。だからチャレンジャーという気持ちで臨めて、第4ピリオドの入りまでは競れたんですけど、最後は離されてしまった。そこがとても悔しかったです」
やはり後悔は尽きないが、県予選2位出場から全国初白星を手に入れ、強豪を相手に一歩も退かずに戦い抜いた。その姿は地元福島の観客やバスケット選手たちに大きな勇気を与えたことだろう。
文=青木美帆