12月26日、東京体育館で「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子3回戦が開催された。洛南高校（京都）は明成高校（高校総体2／宮城県）に59－62で敗れた。
号泣ののち、身支度を整えてから報道陣の前に現れた洛南の大橋大空は、一転してにこやかな表情で質問に答えた。“ザ・関西人”の早口でしゃべくり、テープレコーダーの再生スピードを遅くしてもなお、タイプする手が追いつかないくらい。「チームのみんなにも『しゃべりすぎ』って言われます」と笑った。
試合中も、もちろんしゃべる。仲間に声をかけることはもちろん、自分とも会話する。1.9秒、3点差を追うスローインでは、エンドラインに移動する際「できるできる…」と小さくつぶやき、うなずいた。「僕、中学のときから大事なときにはそうやって自分に言い聞かせるんです。そうしたら力が湧いてくるんで」。
明成戦にフル出場し、17得点7リバウンドを挙げた大橋[写真]=兼子慎一郎
明成のセンター・八村阿蓮がファウルトラブルでベンチに下がっている時間も長く、洛南は試合を優位に進めていたものの、自分たちが磨いてきた速攻を出せず、得点は伸びなかった。「レベルは互角だったと思います。ちょっとしたリバウンドやルーズボールで気持ちが負けてしまったことが、最後の3点差につながったんじゃないかなと思うけれど、みんなとてもよくやってくれました」。そう試合を振り返った。
コートを去る際は、体が震えるほど拳を強く握りしめた。「ちくしょう……」とつぶやいた後には、せき込むほどに激しく嗚咽（おえつ）した。その一方で、中学時代に訪れたアメリカでのバスケット経験を語るときは、キラキラと目を輝かせた。165センチの小さな体から言葉も感情も”だだ漏れ”する大橋だが、上手な優しい嘘もつける。
小さな体から言葉も感情も”だだ漏れ”するからこそ、大橋は人を惹きつけるのだろう[写真]=兼子慎一郎
前述した1.9秒の同点、逆転を狙ったプレー。𠮷田裕司コーチは直前のタイムアウトで３ポイントシュートを打つフォーメーションを指示したが、ある選手の動きにミスが生じ、インサイドでシュートを打たざるを得なかったと話している。
「インサイドを狙ったのは、指示だったんですか？」
記者に尋ねられると大橋はにっこり笑って、変わらずの早口で答えた。
「はい。最後はエースの津田（誠人）にやらせようと思って、3ポイントでなくバスカンを狙いました」
文＝青木美帆