36-70。「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」男子準々決勝、ハイスコアゲームを得意とする桐光学園高校(神奈川県)が、明成高校(宮城県)を相手に36点しか取れなかった。2ポイントの成功率は28パーセント、3ポイントに至っては8パーセント。キャプテンの鈴木悠斗は試合後、こみ上げてくる涙を必死にこらえた。「本当に何もできなかった」。そんな気持ちがとめどなく溢れて止まらなかった。
明成は明らかに、出会い頭をフルパワーで叩いてきた。桐光学園がどれだけボールを回してもシュートどころかドリブルすらさせず、十分な恐怖感を与えてから単純明快なドライブで得点を記録。桐光学園は自らが大原則としていたはずの「まずは守ってから点を取る」という戦い方を相手に奪われ、見失った。第1クォーターから6-25と水を開けられ、善戦する時間帯はあっても引っくり返すことはできなかった。
センターの鈴木響希は、第1クォーターの混乱を自らのリバウンドで立て直そうとした。しかし1試合で奪えたリバウンドは2本。身長のハンデがほぼない相手にも関わらず、なぜリバウンドを奪えなかったのか。
「明成は自分1人に対して2、3人でボックスアウトをしてきた。オフェンスリバウンドにも全員で跳んでいて、その泥臭い部分でやられたと思います。自分がリバウンドを取らないとシュートを思いきり打てないとわかっていたのに、それができなかったことが悔しいです」
ガードの関根隆慈は、これまで経験したことのない明成のボールマンプレッシャーに、ボール運びがおぼつかない場面も。アウトサイドのシュートも決まらなかった。「シュート力を含め、自分のガードとしての能力への反省が一番でかいです」と唇をかみ締めた。
「これまで負けた相手にはオフェンスの能力でやられたと思うことが多かったけれど、明成にはディフェンスで負けたという思いが強いです。オフェンスでも、ノーマークや流れの中のシュートをしっかり決めてられたので、そこは痛手になりました。相手に苦しい流れを与えるためにも、自分たちもシュート力を上げたいです」
高橋正幸コーチは、明成のバスケットをカウンターパンチにたとえた。やりたいことを止められるだけでなく強烈にやり返され続け、選手たちの心は激しく揺れた。
ダメージが回復するには、もしかしたら少し時間が必要かもしれない。傷が癒えた彼らは、再び自らをリングへと奮い立たせることができるか。王者はいつだって挑戦者から生まれるものだ。
文=青木美帆