「高校で日本一になれたことがとてもうれしいですし、成し遂げなければならないとも思っていました」
4試合すべてで25点差以上をつけ、「第74回国民体育大会 バスケットボール競技」を圧倒的な強さで優勝した福岡県。2年生のハーパージャン ローレンスジュニア(福岡第一高校)と2ガードを形成して大会連覇に大きく貢献したのは、1年生ポイントガードの岩下准平(福岡大学附属大濠高校)だ。「(準決勝の)メインコートになってからは力も抜けて自分らしいプレーにできました」と、宮城県との決勝では21得点3アシストの活躍を見せた。
その決勝戦、福岡は今大会で初めて第1クォーターをビハインドで終えた。それでも、2点ビハインドで始まった第2クォーターでは、開始から岩下が積極果敢にペイントエリアにアタックして逆転に成功。同クォーター序盤で宮城にタイムアウトを取らせると、岩下が獲得したフリースロー後に「この時のためにとっておいた」(鶴我隆博監督)と福岡は1-2-2のゾーンプレスを仕掛け、その後は主導権を握り続けた。
持ち前の攻撃力を発揮し、プレスを仕掛けるきっかけを作ったとも言える岩下は「けっこう練習していましたし、自分たちの強みでもありました」と胸を張った。西福岡中学校から福大大濠に入学して約半年が過ぎ「フィジカルとディフェンスの強度が違う。ディフェンスで抜かれずしっかり守ることが課題」と、岩下は改めて中学との違いを肌で感じているようだが、この試合では6スティールをマークして守備でも存在感を示した。
今大会で指揮を執った鶴我監督は、西福岡中のコーチでもあり岩下の恩師にあたる。優勝決定後、岩下は「中学から一緒だったのでやりやすかったです」と口にし、対する鶴我監督は「まだまだ。20点くらいの出来じゃないですか」と笑いながら話した。
「ものすごく楽しかったです。大濠では2、3年に頼ってしまう部分がありますが、国体は自分たちがメインだったので責任感を強く持ってやれました。ちょっとだけ成長できたと思います」
参加資格が変更され、高校1年生が主体となってしのぎを削った今回の茨城国体。福岡の司令塔は、そう今大会を総括し「チームに帰ったら自分がやるべきことを徹底して、大濠でも日本一を取れるようにがんばりたい」と前を見据えた。
岩下は現在、福大大濠でも1年生ながら先発やシックスマンとしてすでにプレータイムを獲得している。全国屈指の強豪校として名を馳せる福大大濠だが、今夏のインターハイは予選で福岡第一に敗れて不出場。昨年のウインターカップに至っても福岡第一が立ちはだかり、予選で涙をのんだ。
夏の間は「『ウインターでは絶対日本一を取りに行くんだ』という思いで、チーム一丸となって厳しい練習をやり抜いた」(岩下)という福大大濠。まだ伸びしろ十分な岩下が成長した分、冬の全国制覇に近づくことは間違いない。鶴我監督も「福岡県はいいガードがたくさんいるので、先輩たちから多くのことを学んでもっともっといいガードになってもらいたい」と、岩下の成長を楽しみにしている。
文=小沼克年