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『B MY HERO!』
「第32回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2019」は大会2日目を終え、男女のベスト4が決まった。そこには女子と同じくジュニアオールスターの歴代最多、7回の優勝を誇る福岡県男子の名前はない。その座をかけて戦った決勝トーナメントの2回戦で岡山県に58-62で敗れたのである。
今大会は予選リーグから苦しい試合の連続だった。秋田県戦はほぼゲームを掌握されながらの逆転勝ち、鳥取県戦も競り合う展開が続いた。決勝トーナメント初戦の群馬県戦こそ序盤で突き放すことができたが、予選リーグのツケは岡山戦で如実に現れた。
序盤から岡山県にペースを握られ、課題のリバウンドも克服できない。後半に入ると、さすがは福岡県と思わせる猛追も見せたが、「もう一歩というところで疲れからか、足が止まってしまいました。そこからまた離されて、そのままブザーが鳴ってしまいました」。そう振り返ったのは福岡県のエース、内藤英真だ。これまでも苦しい場面になると持ち前のスコアリング能力を発揮していた内藤。この日も15点近く離されたところで自らを解放するかのように得点を重ね、一時は2点差にまで追いあげた。
複数のディフェンスに囲まれ、コンタクトをしながらもシュートタッチはあくまでも柔らかい。スピードのあるドリブルにディフェンスがピッタリとついてくると、ステップのスピードを緩めることでシュートが打てるスペースを生みだす。そんな強さと巧さは、昨年8月に引退した1学年上の先輩たちとやり合うことで培ったものだ。
「センターの先輩たちには高さを超えるシュートで、ガードの先輩には抜くことで僕自身が気持ちよくプレーできる感覚を身につけました。その回数が増えてきて、今日につながっているんだと思います」
個人の得点能力という観点で見れば、今大会でも屈指の存在だった。しかし「土壇場で周りが見えていませんでした。疲れて、顔が下がっていたから岡山県に負けたんだと思います」と言うとおり、終盤になればなるほど強引なアタックは増えていった。膝に手を置く場面も増えていたにも関わらず、だ。それでもなおゴールに向かおうとしたのは、やはり福岡県のエースだからだろう。
連戦を戦うための体力のなさを痛感したジュニアオールスター。次にこの悔しさを晴らすのは夏の全国バスケットボール大会(全中)だ。今度は西福岡中学のエースとして、借りを返したい。
比江島慎(栃木ブレックス)や金丸晃輔(シーホース三河)といった日本屈指のスコアラーの系譜を継ぐ福岡県のエースは、この負けをけっして無駄にはしないはずだ。
文=三上太