8月25日に山口県で行われた「平成30年度全国中学校体育大会 第48回全国中学校バスケットボール大会」の男子準決勝 実践学園(東京都)vs玉島北中学校(岡山県)は、3年前の決勝と同じ顔合わせとなった。
試合は重い展開となった。互いに1回のオフェンスにじっくりと時間をかける戦術を選択。それだけに1本のシュート、1点が勝敗に大きくのしかかっていく。玉島北は実践のエース、新井翔太を徹底マーク。そんな新井は左足の故障もあり、ベンチに下がってテーピングを巻き直すシーンが幾度も見られた。
前半は25-23と1ゴール差で実践がリードして折り返す。その実践は家永淳之介と山本真のインサイド陣がゴール下で奮闘。イージーシュートが打たせてもらえない玉島北はシュートがリングを弾き、第3クォーターを4得点に抑え込まれてしまった。
しかし、最終クォーター、諦めない玉島北はジリジリと反撃を開始。残り時間5分17秒、針間大知のドライブが決まると点差は1点に迫った。実践の森圭司コーチはたまらずタイムアウトを請求したが、玉島北はオールコートのディフェンスを繰り出し、プレッシャーを高める。オフェンスでは針間の1対1からのシュートや合わせで一進一退の展開に持ち込んだ。
残り時間は1分を切った。実践は新井が1対1から3ポイントシュートを決めて、4点ものリードを奪う。玉島北は針間の1対1に期待を寄せるが、3ポイントシュートが外れて万事休す。実践が玉島北を49-45で破り、決勝進出を果たした。
「3年前にも負けて…、僕が悪いのかなあ…」
自嘲気味に試合を振り返ったのは玉島北の坪井晶コーチだ。3年前もその年の3月に行われたジュニアオールスターに岡山県チームは優勝を遂げ、そして全中でも全国制覇を狙っていた。当時のメンバーはすでに高校3年生。今年のインターハイで優勝した開志国際高校(新潟県)の小栗瑛哉をはじめ、福岡大学附属大濠高校(福岡県)の土家大輝、山本草大、北陸高校(福井県)の勝部珠莉輝らが名前を連ねる。しかし、この時も全中では実践に敗れた。
「うちの選手がさぼっていたわけではない。しかし、実践は体の寄せなどしっかりと習慣づけられていて、リバウドに絡んできた。そういうプレーの一つひとつが痛かった」と、坪井コーチは試合を振り返る。「どうしても針間に注目が集まるが、彼だけのチームではない。選手層が薄い中、頑張ってくれた」と、最後は選手たちを称えた。
エースの針間は「最後はチームを勝たせることができなかった」と自身を責めた。しかし、「今までで一番楽しい試合ができた。自分のやれることはやり切ったと思う」と、大会を通して悔いはないようだ。「チームメイトはそれぞれ個性があり、それが合わさると爆発力が出る。厳しい時も頑張れるようになったので。最後まで楽しんでプレーをしようと心がけていました」と、最後は胸を張った。
一方勝った実践の森コーチは、「山本がリバウンドを頑張ってくれた。普段はのんびりしている家永もここぞというところで働いた」と殊勲者の名前をあげた。「1試合1試合成長するのがうちのカラー。自分たちの良さを出そうと話をしている」とほっとした表情の中に、チームの成長を感じ取っていた。
文=入江美紀雄
写真=三上太