2018.08.27

最後まで主導権を渡さなかった八王子第一が2度目の全中優勝を果たす

決勝戦で大爆発した八王子第一の玉川なつ珠は40得点をゲット[写真]=三上太
バスケットボールキング編集部

 8月23日に開幕した「平成30年度全国中学校体育大会 第48回全国中学校バスケットボール大会」は最終日を迎え、男女準決勝・決勝が維新百年記念公園スポーツ文化センターで行われた。

取石・前田、八王子第一・森の両エースの対決に注目は集まったが…[写真]=三上太


 女子準決勝を勝ち抜いたのは初優勝を目指す高石市立取石中学校(大阪府)と2度目の全中制覇を狙う八王子市立第一中学校(東京都)。取石は前田心咲、八王子第一は森美麗というエースを擁するだけに、その2人をいかに抑えるかが勝敗を分けると目されていた。

 先制パンチを浴びせたのは八王子第一だった。自慢のバックコーチ陣、玉川なつ珠と酒井杏佳が小気味よくシュートを決めて一気に7点ものリードを奪う。取石は準決勝で見せたような鋭い出会いのディフェンスを発揮できず、第1クォーター開始3分でタイムアウトを請求する事態となった。

 このタイムアウトで自分たちのプレーを思い出した取石が反撃を開始。前田のゴール下や山本雪鈴の速攻で食らいついていく。それでも八王子第一はこの試合絶好調の玉川が第1クォーター終了間際に5連続得点をあげて攻撃の芽を摘んでしまう。玉川はこのクォーターだけで13得点もあげる活躍を見せて、八王子第一がペースをつかんだ。

 第2クォーター、取石はディフェンスからペースをつかもうと激しい当たりを見せるが、八王子第一のボール運びを狂わせることができない。「どうしても森に注目が集まってしまうが、今年のチームはこの2人がいるのが大きい」と、八王子第一の桐山博文アシスタントコーチが信頼を置くガードコンビ、酒井と玉川が取石のアタックに対して2人で対応したり、交互にボールを持つなどしたりして、取石に隙を見せることはなかった。

八王子第一の桐山Aコーチが信頼を置くもう一人のガード、酒井杏佳[写真]=三上太


 八王子第一には日本中から強豪チームが集まり練習試合が行われるのだが、今年のチームが敗れたのは1回のみ。それだけに大会前から優勝候補筆頭という声も聞こえてきた。

「当初は『今年のチームは力がある』と伝えてきたが子供たちはつい現状を見失ってしまうので、途中から、『戦えば勝てる』『戦わなければ勝てない』と言ってきた」と試合後明かしてくれた桐山Aコーチ。そして「全中の決勝戦は最後のコートだから、『思い切って戦ってこい』と送り出した」。

 いくら全中に出場する選手とはいえ中学生だけに、勝ちを意識させることで守りに入る危険性もある。しかし、そんな心配が杞憂に終わるほど、八王子第一のプレーは最後まで安定して、取石に付け込むすきを与えなかった。

「粘り切れなかったのが敗因」と試合後語ったのは取石の安達美花アシスタントコーチ。それでも後半、取石は逆転を目指し、オールコートのディフェンスのプレッシャーを高める。「競り勝っていく中で自信をつけていった。そして大会を通じて成長した」(安達Aコーチ)プレーで八王子第一とがっぷり四つの状況を作り出した。それでも八王子第一の牙城を崩すことができなかった。

 桐山Aコーチが喜んだのは試合の終盤だ。「最後の最後で、体力がないところで速攻を2つ出すなど、いいゲームができた。ミスも多かったが、いい終わり方ができたと思う」。試合終了に向けたカウントダウンが始まる。最後はスターター5人でコートに立った八王子第一のメンバーが健闘をたたえ合い、喜びの輪が自然に出来上がった。

「玉川はチームがミスした時に必ず決めてくれる。関東大会でも決まっていて、そこで終わるかと思ったが、全国でもずっとそれが続いていた。自分が点を取るんだという自覚が出てきたように思う。玉川には『日本一のガードになれ』と言ってある。そして酒井に伝えているのは『日本一のディフェンスができる選手になれ』ということ。この2人がチームを最後まで支えてくれた」(桐山コーチ)

最後は選手たちの成長を見守った八王子第一の桐山Aコーチ[写真]=三上太


 優勝候補と目されながら、そのプレッシャーに押しつぶされることなく完璧に勝ち切った八王子第一。百戦錬磨の桐山Aコーチをして、その予想を上回るパフォーマンスを見せてくれた今年のメンバー。2度目の全中制覇は彼女たちが成長を最後まで止めなかったからこそ、その栄冠を獲得できたと言えるだろう。

文=入江美紀雄
写真=三上太

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