【W杯予選直前情報】バスケットボールを国技とする強敵フィリピンをホーム東京で迎え撃つ!

要注意選手のブラッチェ、ウィリアム、ロメオ(左から)

“AKATSUKI FIVE”男子代表代表が『FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選』の初戦で対戦するフィリピンは、ここ10年でアジアの強国として確固たる地位を築いてきた。選手たちは「バスケットボールは国技」と胸を張り、熱狂的なサポーターが彼らを後押しする。日本代表にとって非常に危険なチームであることは間違いないが、チームとしての強さの秘密を探ってみたい。1対1を基本とするトリッキーなスタイルはフィリピン独自のもの。それを軸にたたみかけてくるオフェンスは要注意だ。

 FIBAバスケットボールワールドカップ2019アジア地区 1次予選の初戦で対戦するのは、ここ数年でアジアの強豪にのし上がったフィリピンだ。

 フィリピンはFIBAランキング30位。アジアの中ではオーストラリア、イラン、中国、ニュージーランドに次ぐ5番目に位置し、アジアでは最古の1975年にプロリーグ「PBA」(Philippine BasketballAssociation)を設立した古豪である。そして、熱狂的なバスケファンがいる国としても知られている。

 街中のいたるところにバスケットボールリングがあり、子供から大人までストリートバスケを楽しんでいる。また、今年10月27日に幕を閉じたPBAのガバナーズカップのファイナル第7戦では、55,000人収容のフィリピンアリーナに、過去最高となる53,642人を集めたことからも、いかにバスケットボールが国民に愛されている競技かということがわかるだろう。2013年にアジア選手権がマニラで行われた際には、2万人収容のモール・オブ・アジアアリーナのチケットは争奪戦となり、代表選手たちは「バスケットボールは国技だ」と胸を張っていた。

 そんな熱狂的なファンを持つ古豪が、アジアの強豪へとのし上がったのはこの10年のこと。2000年初頭に国の統括組織である協会とプロリーグのPBAが内紛を起こし、代表選手の招集をめぐって対立。FIBAから国際大会出場資格停止処分を受け、2001年と2005年のアジア選手権(現アジアカップ)に出場できない事態に至った。

 復活の一歩を踏み出したのは2007年。現ヘッドコーチであるビンセント・レイエスが指揮官となり、強豪に善戦しながらアジア選手権で9位の成績を収めると、「ここから新たな歴史が始まる」とレイエスHCは声高らかに宣言し、復活へのスタートを切ったのだ。

 2009年には、現在も続く代表チームの愛称で、勇敢という意味を持つ『Gilas Pilipinas(ギラス・フィリピナス)』というプロジェクトが立ち上がり、PBAと協力しながら代表選手を幅広く選出し、試行錯誤を繰り返しながら強化を進めていく。

 2009年と2011年のアジア選手権では、2007年にイランを初制覇に導いたセルビア人のライコ・トローマンが指揮を執って4位まで順位をあげると、自国開催の2013年アジア選手権では、二度目の指揮官となったレイエスHCのもとで準優勝へと駆け上がった。翌年、40年ぶりに出場したワールドカップでは、予選ラウンドでセネガルから1勝をもぎ取ったほか、クロアチアに78-81、アルゼンチンに81-85、プエルトリコに73-77と大激戦を繰り広げるまでに躍進。現地スペインに駆けつけた熱狂的なファンには、最も価値あるファンが受賞する「MVFベストカントリーアワード」が贈られている。そして、2015年のアジア選手権では2大会連続の銀メダルを獲得。翌年、自国で開催したオリンピック世界最終予選では、フランスとニュージーランドに敗れたものの、それぞれ9点差で健闘した内容を繰り広げた。

 こうした大躍進の原動力となっているのは、フィリピン独自のスタイルを確立させたことにある。トリッキーな1対1を武器とするガードや3ポイントを武器とするシューターを軸とするトランジションはアジア最速といえるスピード感にあふれている。そして忘れてはならないのが、センターに帰化選手を擁して高さを補ったことだ。2015年のアジア選手権で日本は、準決勝にてアンドレイ・ブラッチェの高さと多彩さの前に屈している。決戦を前にして、主力にケガ人がいるとの情報も入ってきているが、今回もチームの柱であるガードのジェイソン・ウィリアムとテレンス・ロメオ、帰化選手のアンドレイ・ブラッチェが揃えば脅威。さらに勢いある若手を加えて日本に乗り込んでくる。

アメリカからの帰化選手であるブラッチェがインサイドで君臨する

スピードに乗ったオフェンスをリードするウィリアム

ロメオのアタックは日本にとっても要注意

文・写真=小永吉陽子

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