メディアの前に立った富樫勇樹(千葉ジェッツ)の表情はいつもよりも曇っていたように感じた。大事な初戦を落としたことへの悔しさ以上に、自分のプレーをやりきれなかったことの不甲斐なさがにじみ出ていたようにも見えた。
11月23日、「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選」が開幕。24日の初戦に臨んだFIBAランキング50位の“AKATSUKI FIVE”男子日本代表チームは同30位のフィリピンに71-77で敗退した。
自身にとってもまさかのスタッツだろう。富樫の前半の得点は0。プレーイングタイム7分11秒で、シュート試投はわずか3本だった。
「フィリピン戦ということで、まずディフェンスということが頭にあった。それとポイントガードとしてコートに立つメンバーにボールをタッチさせることも優先させた」
試合の入り方としては至極当然の方法だと言えるが、フィリピンも日本と同様に手探り状態にあっただけに、“セルフィッシュ”なプレーヤーがいても良かったかもしれない。確かにそれは“たら・れば”にすぎないのかもしれないが、後半の出来が良かっただけに、ティップオフ直後の、特に5分間の出来が悔やまれる。
以前、「代表でも千葉の時のようにアグレッシブなプレーをしたい」と語っていた富樫。しかし、国際大会の初戦ということで“普段着”のプレーができなかったのかもしれない。
「もっといろいろな経験をして、どのような状況にも対応できるようにならないと」
当然のことながらフィリピンは富樫を徹底マークした。ピック&ロールに対してもファウル覚悟で激しく当たり、プレッシャーをかけていったことは事実だ。後半に入り、マッチアップのプレーヤーのスタミナが切れてくることで、ノーマークになるシチュエーションの回数が増え、富樫自身も集中力を取り戻して8得点をゲット。第4クォーターに見せた3ポイントシュートやアシストは本来のプレーを取り戻していた。
一旦は逆転に成功した日本だったが、前半のビハインドを追う展開が響き、最後はフィリピンに振り切られた。「第4クォーターで引き離されたのは実力の差だと思う」と富樫は反省の気持ちを込めて総括。それでも、試合は待ってくれない。試合の翌日にはオーストラリアに向かって旅立った日本代表。それを勝利に導くのが富樫の役割だ。
「オーストラリアは強敵だけど、勝たなければいけない。もちろん簡単に勝てるとは思っていないが、チーム全員が100%勝つ意識を持って臨みたい」
文=入江美紀雄