日本がW杯に出るシナリオとは…出場に必要な条件と他国の状況をチェック

予選最終章となるWindow6に挑む男子日本代表 [写真]=山口剛生

◆アジアの出場枠は中国を除いて「7」。すでに3チームが決定

「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 2次予選」もいよいよ最終決戦。2月21日にイラン、24日にはカタールにて、アウェー2連戦が行われる。現在グループ3位の日本が出場権を得るには残り2戦をどう戦えばいいのか。最終決戦の前に出場権の行方を整理したい。Window5終了時点での順位は以下のとおり。

・グループE
1:ニュージーランド(9勝1敗/+233)
2:韓国(8勝2敗/+110)
3:中国(6勝4敗/+163)
4:レバノン(6勝4敗/+101)
5:ヨルダン(5勝5敗/+56)
6:シリア(2勝8敗/-251)

・グループF
1:オーストラリア(9勝1敗/+318)
2:イラン(7勝3敗/+76)
3:日本(6勝4敗/+88)
4:フィリピン(5勝5敗/-21)
5:カザフスタン(4勝6敗/-96)
6:カタール(2勝8敗/-209)

 2019年のワールドカップから大会規模が拡大し、出場チームが「24」から「32」へと増加した。それに伴い、アジアはオセアニアと合同予選となり、出場枠は「3」から「7」へ。開催国の中国が権利を得ているため、オセアニアを含むアジアからは8チームが出場することになる。出場権は2次予選の各組上位3位までの6チームと、残り1枠を懸けて(開催地の中国を除く)両組4位同士が争い、成績がいいほうが7位となる。(※E組は中国が4位以内ならば、5位が繰り上げ4位となる)

 すでに出場を確定させているのは、E組のニュージーランドと韓国。F組のオーストラリアの計3チーム。出場圏内にいるのはE組のレバノン、ヨルダン。F組のイラン、日本、フィリピン、カザフスタンの6チームで、このうち4チームが出場できる。

◆グループFは日本とフィリピンが熾烈な3位争い。イランは1勝すれば確実、カザフスタンは首の皮一枚

バハラミ(左)、ハダディ(右)の不在は日本にとって追い風となるはずだ [写真]=FIBA

 日本は2連勝すれば他国の結果に関係なく出場権を手にし、最短では21日に確定する。そのケースは日本がイランに勝利し、フィリピンがカタールに負けることが前提だ。そうなれば日本(7勝4敗)、フィリピン(5勝6敗)で2勝差となり、日本のグループ3位以内が確定する。

 日本が1敗、もしくは2敗すると、グループ3位の雲行きは怪しくなる。日本の浮上を阻むのは1勝差で4位にいるフィリピンだ。

 フィリピンはWindow3の乱闘事件にて主力数名が出場停止処分を受けたことにより、戦力ダウンを強いられた。そのためWindow5では、ホームでカザフスタンとイランに屈辱的敗戦を喫して5勝止まり。その間に日本が破竹の6連勝で3位に浮上した。だが、フィリピンの残す相手はカタールとカザフスタンであり、また処分の解けた主力を戻すことからも、力関係から言えば2連勝する確率が高い。もしフィリピンが2連勝し、日本が1勝1敗の場合は7勝5敗で勝敗が並ぶが、日本はフィリピンに2敗しているため、直接対決の結果で4位になってしまうのだ。

 また、Window5でフィリピンに勝利したカザフスタンは、わずかながら可能性が残っているため、2015年以来となる帰化選手を招集してホームで勝負に出る。新加入となるガードのアンソニー・クレモンズは、カザフスタン代表の主力がそろうアスタナでプレーしていることから、チームへの融合には問題ないだろう。ただし、カザフスタンが生き残るには2連勝して7位争いに持ちこむしかない。それも、オーストラリアとフィリピンを倒さなければならないので茨の道である。

 ただし、出場権を持つオーストラリアは、今季はNBAに挑戦したミッチ・クリークを復帰させる以外は、シーズン中であることを考慮して若手を多く選出しているので、チャンスがないわけではない。いずれにしても、日本の順位に関係するカザフスタン対フィリピンの最終戦は注目だ。

 そして、あと1勝すれば確実に出場権を得るイランは、サマド・ニックハ・バハラミや218センチのセンター、ハメド・ハダディら核となるベテランと折り合いがつかず、代表入りには至らなかった。Window4での日本戦同様、世代交代を迎えた中で挑むことになるが、ホーム開催なだけに勝負をかけてくるはずだ。

◆7番手を争うヨルダンとレバノンの勝敗にも注目

6勝4敗のレバノン(上)、5勝5敗のヨルダン(下) [写真]=FIBA

 日本がグループ3位以内を逃した場合は、逆組4位と7位の座を争う。そのターゲットはE組のレバノンとヨルダンで、とくにヨルダンと争う可能性が高い。

 ヨルダンは中国とニュージーランド、レバノンはニュージーランドと韓国と対戦する。これまでの力関係を見れば、レバノンとヨルダンは分が悪いといえるが、厄介なのはニュージーランド、韓国、中国は出場権を得ているため、アウェーではメンバーを落としてくることだ。韓国はリーグ戦中で負傷者が多いことから、主力と育成メンバーの混成チームにすることを早々に発表。ニュージーランドは「ワールドカップの組み合わせを睨み、アジア予選の順位を優先させる」との声明が出ていることから大幅にメンバーを落とすことはなさそうだが、負傷者の状況次第ではヨルダンとレバノンにチャンスが到来する可能性もある。

 そんな中で注目となるのは22日のヨルダン対中国だ。ここまでの中国は様々な選手をテストした末に、Window5では主力級をそろえてホームで圧勝。アウェーで戦う今回は再びテストメンバーを起用する。そこで目玉となるのがNBAのヒューストン・ロケッツに一時在籍していたジョウ・チー(212センチ、23歳)の参戦だ。ジョウ・チーは昨夏のアジア大会ではMVP級の働きで中国を優勝に導いた選手。今回の選出は国内リーグに復帰したこともあり、代表に馴染ませたい意向がうかがえる。中国がヨルダンに勝てば日本は7位争いで優位に立ち、22日に出場が決定する可能性もある。

2017-18シーズンにロケッツで18試合に出場したジョウ・チー [写真]=Getty Images

 また、レバノンとヨルダンの関係も理解しておかなければならない。現時点ではレバノンが1勝上回っているが、最終勝敗が並んだ場合は直接対決の結果からヨルダンが逆転する。その場合、7位の座はレバノンと競うことになるが、レバノンは失点が少ないので得失点差に要注意だ。

 日本は自力でグループ3位以内を目指し、7位争いとなっても、ヨルダンが相手ならば優位に立っているのが現況だ。7位までを睨めば念願のワールドカップ出場の可能性は高いといえる。しかし、各国の強化事情が異なる上に、中東が主な決戦場となるだけに激戦は必至。他国の状況も注視が必要な最終決戦となる。

文=小永吉陽子

モバイルバージョンを終了