Bリーグ2シーズン目を迎えた男子バスケットボール界。2019年にはFIBAワールドカップ、翌2020年には東京オリンピックが控え、より一層の発展へ期待が高まるばかりだ。日本バスケットボール協会やBリーグは両大会、さらにその先を見据えて選手の強化に力を入れている。すでにアメリカの大学で活躍する渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大学)や八村塁(ゴンザガ大学)、日本代表に名を連ねる馬場雄大(アルバルク東京/筑波大学4年)などが台頭しており、それに続く超逸材、さらに可能性を秘めた“原石”もまだまだいる。ここでは『バスケットボールキング』推薦のスター候補生を紹介する。第17回は早稲田大学のルーキーで、早くも存在感を発揮している小室悠太郎。100キロを超える巨体を兼ね備えながら、アウトサイドシュートも得意だ。ラグビーからバスケットに転身した“変わり種”小室の成長に期待したい。
「はい! はい!!」
コートに響き渡る野太い声に驚き、その主を探す。ポストでボールを受けようとしている早稲田大学の小室悠太郎だった。
「ディフェンス!」、「スクリーン!」。常に大きな声を張りあげ、100キロオーバーの体を揺らして全力疾走。この9月で19歳になったばかりの大学1年生のはずなのだが、コート上で放つ存在感はとてもルーキーとは思えない。何ならタオルを首にかけてベンチに座っている姿ですら、貫禄がある。
プレー面でも1年生ながらすでに欠かせない存在だ。留学生がおらずセンター陣のサイズがない早稲田大にとって、高さと幅があり、アウトサイドシュートも得意な小室の果たす役割は非常に大きい。3月の東京六大学リーグでデビューを果たし、5月の関東大学選手権でもスタメンを張ったが、これほど早く出場機会が訪れることはまったく想像していなかったという。「最初やから、様子見で出しとるんかと思っていたら……」と、郷里、石川のイントネーションで照れ臭そうに話した。
昨年、小室がキャプテンを務めた北陸学院高校(石川県)は、創部4年でウインターカップ(JX-ENEOSウインターカップ2016)3位入賞を果たした。現在同校のエースとして活躍する大倉颯太が大きく目立っていたものの、スクリーン、ポストプレー、3ポイントと状況に応じて的確にプレーを選択する小室のクレバーさと献身があってこその好成績と見る関係者も多かった。
小学生時代はラグビーに親しみ、バスケットを始めたのは中学から。「高校時代は戦術をよく知っている大倉たちに僕はついていくだけでした。だからこそチームを支えて、声を出し続けることを心掛けていました」と振り返り、「大学でもそれを続けるのが自分の仕事だと思っています」と続けた。
現在の課題は体を張ってディフェンスリバウンドを死守することと、ファウルのケア。特にファウルトラブルは、すでに替えの利かない存在となっているだけに死活問題とも言える。「大学に入って、安定したプレーができたことがまだ一度もないんです。1試合を通して得点を取って、リバウンドを取って、ディフェンスをがんばれるようになりたいです」と今後の目標を話した。
小学生の頃、昼休みに友だちとやっていたバスケットが楽しくて、ラグビーから転身した。「今日の試合(10月9日の専修大学戦)は前半16点離されましたけど、後半は一気に8点差まで縮めましたよね。ああいう鳥肌が立つ時間帯がすごく好きなんです。ただプレーするだけでなくて、ああいう瞬間を楽しむことでバスケをやる意義をもっと感じられるんだと思います」。そして「それに勝利がついてくればもっとうれしいんですけどね」とつけ加え、笑った。
風貌だけでなく考え方もどこか大人びた19歳。クレバーかつエナジー溢れるプレーを、ぜひ試合会場で見てほしい。
文=青木美帆
写真=早稲田スポーツ新聞会