秋の第93回関東大学バスケットボールリーグ戦での対戦成績は1勝1敗。第69回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)男子3位決定戦の拓殖大学vs白鴎大学はどちらが勝ってもおかしくない対戦カードとなったが、フレッシュマンが織りなすコンビネーションプレーと、粘り強いオフェンスリバウンドを足掛かりに拓殖大が98-81で勝利した。
第1クォーターは互角の展開だった。白鴎大のエース、野崎零也(4年)がこの10分間だけで6本の3ポイントを沈める大活躍を見せた一方で、拓殖大もゲイ・ドゥドゥ(1年)も3本の3ポイントで応戦。24-29とまずは白鴎大が主導権を握る。
しかし、拓殖大がフルコートディフェンスを展開した第2クォーターから、少しずつ流れが変わり始める。白鴎大は奥野功知(4年)のエナジー溢れるプレーや神里和(4年)のアウトサイドシュートが光ったが、野崎がベンチに下がった時間帯に得点が停滞してしまった。インサイドの要、ディオップ・マムシェッハイブラヒマ(2年)は40分間出ずっぱり。拓殖大は交代出場の山崎拓(4年)、山梨歩(3年)、富山仁志(4年)、平良彰吾(2年)が短い時間ながら持ち味をしっかりと出して活躍した。
また、白鴎大に最も痛手を与えたのが岡田侑大(1年)とドゥドゥの2対2。203センチの高さがありながらアウトサイドシュートが得意なドゥドゥの個性を活かし、ピック&ロールだけでなくピック&ポップも積極的に展開した。白鴎大の落合嘉郎コーチは「2対2に対応できずにズレてしまったし、その結果、ディフェンスリバウンドが取れなかった。そこでがんばれるか、がんばれないかがカギだったのですが……」とコメント。拓殖大はドゥドゥだけでなく183センチの阿部諒(4年)や182センチの荒川颯(2年)が、ガードポジションながら果敢にオフェンスリバウンドに飛びこみ、3位入賞を果たした。
高校界に引き続き、大学界でもアフリカ系の留学生が台頭してきた。多くのチームが彼らをインサイドでのプレーにこだわらせるが、池内泰明コーチはそうではない。
「それだけでは我々のバスケットの面白みが出ないので、アウトサイドからのプレーを自由にやりつつ、バランスが悪いときはコールしてインサイドに切り替えてくれればと考えています。僕だけでなく選手たちも同じようにプレーしていると思います」
池内コーチ自身を含め、過去にも多くの長身オールラウンダーを輩出してきた拓殖大らしいスタイルが、ドゥドゥという好プレーヤーを獲得したことで大きく花開いた。
また、もう1つの伝統であるディフェンスも、今年のチームは高いレベルで達成できた。阿部の「今年は例年にないディフェンスのチームになれた」という言葉を受けて池内コーチはこう評価している。
「うちは決して大きなチームではないので、毎年フルコートディフェンスで上から仕掛けたいと思っています。いつもは40分のうちほんのわずかしかできなかったけれど、今年の選手たちはすごく意識してやれました。リードが開いても40分間やり続けたことがリーグ戦の優勝にもつながったのだと思います」
阿部は、弱気になるとハーフコートのディフェンスに切り替えようとするチームメートたちに対して、常に「40分間続けよう」と声を掛け続けた。ドゥドゥと岡田という1年生が軸となるオフェンスを支えたのも4年生たちだ。「2人の2対2に阿部や飯田遼(4年)がいい判断をして局面を作ったことがこの試合につながりました」と、池内コーチも彼らのがんばりを称えた。
一方の白鴎大は、昨年の3位に続き4位という好成績。しかし、落合コーチの目線はすでに“もう1つ上”に向いている。
「僕たちは昨年、ようやくベスト4に入ったばかりのチーム。昨日の準決勝で対戦した大東文化大や、(3位決定戦で対戦した)拓殖大にあったものがまだまだ足りなかったなと。彼らの素晴らしいパフォーマンスで自分たちがいつもやっているようなディフェンスができなかったことに尽きると思います。来年はセカンドチームの力をもっと強化していきたいです」
文=青木美帆
■第69回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)男子3位決定戦
拓殖大学|24|23|26|25|=98
白鴎大学|29|14|19|19|=81