アンダーカテゴリーでの経験が日本代表での飛躍へ
7月20日~28日の期間でタイ・バンコクにて「FIBA U19 女子バスケットボールワールドカップ2019」が開催される。この大会は19歳以下(2000年生まれ)の選手たちが世界ナンバーワンを決める大会で、各大陸予選を勝ち上がった全16チームがしのぎを削る。
日本は、予選を兼ねた「FIBA U18女子アジア選手権大会2018」にて準優勝となり、出場権を獲得。この大会からオセアニア地域のチームも加わったが、日本は準決勝でオーストラリアを撃破してアジア2位となった。
U19 女子ワールドカップの歴史をたどると、第1回は「世界女子ジュニア選手権」として1985年に開催。幾度か名称が変更となり、前回大会より「U19女子ワールドカップ」と呼ばれるようになった。
また、第1回からは4年おきに開催されていたが、2007年大会から2年おきとなり、大会の規模も拡大。参加チームが12から16に増えた。そのため、アジアの出場枠もそれまでの2から3に増加。さらに今大会よりオセアニア地域のチーム加入により4となっている。
日本の初出場は1993年大会。同大会は開催地が韓国だったため、アジアからは韓国と中国、日本の3チームが出場した。当時のメンバーは、濱口典子、大山妙子、川上香穂里(日鉱共石/現JX-ENEOSサンフラワーズ)に岡里明美(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)といった顔ぶれ。後にアトランタ・オリンピック(1996年)に出場するメンバーが主力を務めた。この時の結果は、日本は8位で韓国は4位になっている。
4年後の1997年大会には三木聖美(シャンソン化粧品)、石川幸子(現・日立ハイテククーガーズ・アシスタントコーチ)、矢野良子(元トヨタ自動車)、川畑宏美(元JOMO/現JX-ENEOS)といった選手が出場。しかし、結果は最下位の12位に。続いて2001年大会でも、大神雄子(現・トヨタ自動車アンテロープス・アシスタントコーチ)、田中利佳(元JX/現JX-ENEOS)を中心に挑むものの、世界の壁は厚く、12チーム中11位となった。それでも三木、大神はそれぞれの大会で得点王に輝き、その存在を大きくアピールした。
翌2005年大会はアジアで3位だったため出場はならなかったが、2007年大会からは連続で出場。参加が16チームとなった2007年大会以降の主な選手と成績は以下になる。
【2007年】主な選手:冨崎里奈(トヨタ自動車)、森ムチャ(拓殖大学)、中畑恵里(富士通レッドウェーブ)、高橋礼華(日本航空JALラビッツ)●成績:13位
【2009年】主な選手:間宮佑圭(JOMO)、濱口京子(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)、丹羽裕美(早稲田大学)、伊藤恭子(デンソーアイリス)●成績:12位
【2011年】主な選手:町田瑠唯(富士通)、内野智香英(松蔭大学)、本川紗奈生(シャンソン化粧品)、渡邉亜弥(三菱電機コアラーズ)●成績:7位
【2013年】主な選手:藤岡麻菜美(JOMO)、河村美幸(シャンソン化粧品)、田村未来(早稲田大学)、北村悠貴(大阪人間科学大学)●成績:8位
【2015年】不出場
【2017年】馬瓜ステファニー(トヨタ自動車)、赤穂ひまわり(デンソー)、梅沢カディシャ樹奈(JX-ENEOS)、宮下希保(アイシン・エィ・ダブリュ)●成績:4位
※所属は当時のもの
このように、ここには挙げきれないほど、大学やWリーグで活躍したOGや現在も活躍中の選手は多く、アンダーカテゴリーでの経験が日本代表での飛躍へと繋がっている選手もたくさんいる。
残念なのは2015年大会。FIBAの制裁で国際活動を禁止されていたことで前年のアジア選手権では赤穂さくら(デンソー)、曽我部奈央(日立ハイテク)、高田静(JX-ENEOS)といった選手たちが躍動し、自らの手で世界への切符を勝ち取っていたのだが、出場はならなかった。彼女たちの貴重な経験の場が無くなったことは、決して忘れてはならない事実だろう。
世界の扉をたたいた先輩たちからのエール
今回、U19女子ワールドカップを経験したOGともいえる2人の現役日本代表選手に当時のことを聞いた。
「ライバルたちの成長を感じる大会」藤岡麻菜美(日本代表/JX-ENEOS)
藤岡はU16、17、18、19、ユニバーシアードと、すべて大会に日本代表として出場した稀有な選手。その中でU19の大会はどのようなものだったのだろうか。
「私は全部のカテゴリーを経験しましたが、U16のアジア選手権だと、まだ高さだけの選手もいるというか、だから簡単にドリブルで抜くこともできたんですね。でも、カテゴリーが上がれば上がるほど、ビックマンも上手くなるんです。しかも、いきなり上手くなってる印象がありましたね。そういったのを目の当たりにして、改めて自分たちも成長しているけど、同世代の他国の選手も上手くなっているんだなと感じました。
国内の選手なら上達をすぐに感じることができます。世界の選手たちも今はSNSなどを通して知れるとはいえ、やっぱり同じ国際大会に出ているからこそ分かるものがあるというか。私はフランス代表のガードでU17世界選手権でマッチアップした選手が、3年前の日本代表の海外遠征で練習試合をした時にもマッチアップして。その時、すごく上手くなっているなと感じました。彼女は、今フランス代表にも入っているので、そういったことは刺激になっていますね」
「トップの日本代表を目指すキッカケになった大会」町田瑠唯(日本代表/富士通)
町田にとって初めて日の丸を付けて国際大会を戦ったのがU19女子世界選手権。この大会でベスト5を受賞したが、7位チームからの選出は快挙だった。同時にアシスト王にも輝いている。
「U19の世界大会は、私が日本代表を目指すキッカケになった大会です。それまでもアンダーカテゴリーの日本代表に入りたいという気持ちもあったけれど、そこまで深く強く思ってはいませんでした。でも、実際にU19の日本代表として世界大会に出たら、日本のバスケットをいろんな人に見てもらって、そしてすごく応援もしてもらったことで『やっぱりトップでもやりたいな』という気持ちが強くなりました。
ベスト5は、みんなのお陰。アシスト王だったのもみんながシュートを決めてくれたからだし。日本のバスケットを全チームが『すごい』『面白い』と言ってくれていたので、それでアシスト王だった私が代表してもらったような気持ちでいます。
ビックリしたのはブリアナ・スチュワート(アメリカ代表で優勝した昨年のワールドカップでMVP、所属するWNBAのシアトルストームでも2018シーズンは優勝しMVPに輝いている)。同じベスト5を受賞しているのですが、当時、一緒に並びながら『この人あまりうまくなかったよなぁ』と思ってたんです。そしたらもう今はめっちゃ上手くなってるじゃないですか(笑)。彼女の大学の時のプレーは見ていないから、久しぶりにスチュワートを見た時、『あれ、見たことある人だな』って。それであの時のベスト5の選手だと分かり、『こんなに成長するんだ。自分も頑張らないといけないな』と思いましたね」
2人のようにU19ワールドカップはバスケット人生に大きな影響を及ぼす大会。20日に開幕する「FIBA U19 女子ワールドカップ2019」に出場する日本代表たちも同じことだ。最後に町田は、そんな決戦に向かう後輩たちにエールを送ってくれた。
「私の時はすごく楽しかったんです。他の国のいろんな選手と対戦したり見たりすることができて。海外の選手の高さや上手さ、パワーを感じれるのは出場した12人だけなので、今後の刺激になるように、そして何より楽しんできてほしいです」
※選手の氏名は現役当時のものを記載
文=田島早苗