待望のシュートは第3クォーターの残り3分を切ってから。日本は約4分間無得点だったが、奥山理々嘉が鮮やかに3Pシュートを沈めて10点差に詰めた。
これは奥山にとって今大会初の得点。それまでの4試合も7本の3Pシュートを放ったがネットを揺らすことはなかったのだ。このベルギーとの準々決勝、奥山は第4クォーターでもさらに3Pシュートを沈める。だが、試合に敗れ「3Pシュートを2本決めたけれど、チームが勝てなかったことは悔しいです…」と、目を潤ませながら語った。
今大会、ディフェンスに課題を残すことと「コンディションも悪くて」(奥山)といったこともあり、思うようにプレータイムを得られず。また限られた時間の中で結果を残せないことで奥山は苦しんでいる。
「体が動かないし、シュートも悪いし。何かほんとに自分がなんでこうなってるかなって苦しかったです。それまではプレータイムをもらっていたのが、今回のようにあまりコートに立てる時間がない中で調子を上げることができなかったのですが、コロンビア戦(決勝トーナメント1回戦)と今日のベルギー戦とたくさん試合に出せてもらえたことは良かったです」と奥山は言う。
中学、高校とポイントゲッターを担ってきた点取り屋にとっては初めての経験かもしれない。だが、奥山は「自分がチームのために何もできていなかったのですが、気持ちが折れないようにというか…。ずっと苦しい思いばかりだったんですけど、今自分ができる事は何か、やるべきことは何かを考えて、そこは一番自分が努力しないといけないことだと思いました」と言う。
ハーフタイムになると、チームはミーティングのために一旦、ロッカールームに戻る。それからしばらくしてそれぞれコートに戻ってくるのだが、この時、奥山は一番最初にコートに立ち、誰よりも早くシュート練習を開始していた。これまでの試合全てでだ。
気持ちが腐ってしまいそうな状況ではある。それでも、「そこは自分の意識次第なので、少しでもチームのために何ができるか。一番の努力をしてコートに立つべきだと思っているので」と、その思いを語った。
これまでも超が付くほどのポイントゲッターとして注目されてきた彼女だが、ウインターカップ1試合最多得点といった過去の偉大な記録より、こうした現状を受け止めて前に進もうとする姿勢こそが“奥山理々嘉”の“凄さ”を表しているではないだろうか。
試合後、「今も苦しいですけど」という奥山だが、ようやく決まったシュートには「少し吹っ切れたというか、これまでは自信がなかったので。明日は思いっきり良く、1本目をまだ迷っているところもあるし、決していいシュートではなかったので、もっといいシュートを決めたいです」と、気持ちを新たにする。
3Pシュート2本で6得点。奥山が自らの手でこじ開けた重い扉から光が差し込んできた感がある。
「明日以降も試合はあるので、準備を大事にしてチーム勝利のためにもっともっと力を出したいと思います」と、奥山は残りの2試合もこれまで通り“準備”を怠らない。
文=田島早苗