5月10日に開幕した「天皇杯 第47回日本車いすバスケットボール選手権大会」は初日、1回戦4試合が行われた。その第4試合に登場したのは、東日本第2次予選会優勝のパラ神奈川スポーツクラブ(関東ブロック)と西日本第2次予選会準優勝の福岡breez(九州ブロック)。
いまや日本代表に欠かせない存在へと成長した若手・古澤拓也と鳥海連志を擁するパラ神奈川に対し、日本代表強化指定選手の福澤翔を擁する福岡が、どんなバスケを見せるのか。1回戦最後のカードとなったこの試合に、会場の全視線が集まった。
「日本一のスピードを見せたい」、記者会見でそう宣言したのは古澤。走力としての速さだけではなく、トランジションやパスの速さ…すべてにおいてスピードで圧倒していこうというのが、今シーズン、パラ神奈川が目指すバスケだ。
第1クォーターこそ連携ミスが続き、なかなかリズムに乗れないパラ神奈川だったが、それでも、ビッグマンでポイントゲッターでもある福岡の福澤翔には思うように仕事をさせなかった。第2クォーターに入ると完全にパラ神奈川ペース。ディフェンスを徹底し、リバウンドからの速いトランジションでボールを展開する。レイアップシュートや3Pシュートなど、多彩なシュートを織り交ぜ次々と得点を重ねていった。そうして、実にこのクォーターだけで32得点を叩き出した。
こうなると、もう誰もパラ神奈川を止めることができない。古澤・鳥海に負けじとU23世代の丸山弘毅が決めれば、女子強化指定選手の土田真由美がベースラインからのショットで存在感をアピール。各クォーターで10点を取るのがやっとの福岡に対して、パラ神奈川はその倍の得点力で差をぐんぐん広げる。
終わってみると95-38の大差で圧勝し、パラ神奈川が準決勝への最後の切符を手に入れた。
福岡breezの福澤は試合を振り返り、「パラ神奈川との差はスタミナとスピード、そして選手層の厚さ。選手交代してどの選手が入っても40分間を通して一貫しているパラ神奈川に対して、うちはハイポインターが2人しかいなくてメンバーが代えられない状況。ただそこをどうにかしないとこの先はないと感じている」と苦しいチーム事情を明かした。
一方、この試合でチーム最多の32点を挙げた古澤は「満点に近いかなり良いバスケができた」と満足そうな表情。「ただ、明日も継続できないとたまたまになってしまう。気を引き締めて頑張ります」とすぐに気持ちを切り替えた。
パラ神奈川は11日、公式戦では1勝1敗のライバル・埼玉ライオンズ(関東ブロック)と決勝進出をかけて戦う。
文・写真=張理恵