1990年代に6度のチャンピオンシップを獲得したシカゴ・ブルズにおいて、“史上最強のデュオ”とも称されたマイケル・ジョーダンとスコッティ・ピペン(共に元ブルズほか)。ジョーダンは史上最多となる10度の得点王、6度のファイナルMVPをはじめ、NBAキャリアで残してきた実績は枚挙にいとまがない。
その一方で、現役選手として最強の名を手にしている“キング”ことレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャアバリアーズ)は、筋骨隆々の肉体と、超人的なアスリート能力を兼備するスーパースター。「史上最強の選手は誰だ?」というトークには必ずといっていいほど名前が挙がっている。ジョーダンが現役として最後にプレーしたのはウィザーズ在籍時の2002-03シーズンだったため、03年にドラフト指名されてNBA入りしたレブロンはNBAのコート上でジョーダンと一度も対戦していないことも、興味深いことなのかもしれない。
そんな中、ジョーダンと共にブルズを優勝に導いたピペンが、12月15日(現地時間14日)に現地のテレビ番組『First Take』に出演。そこでピペンは「レブロンは、少なくともスタッツ上ではすでにジョーダンを超えている」と発言し、周囲を驚かせた。
"I just want to throw this water on you!"
–@stephenasmith to @ScottiePippen after he said this … pic.twitter.com/XSswRobpdz
— First Take (@FirstTake) December 14, 2017
ピペンは「数字は嘘をつかない。彼(レブロン)はMVPの獲得数でジョーダンに追いつくことはできないかもしれない。でもレブロンが残している数字を見てくれ。得点ではない。アシストやリバウンドの数字を見てみると、レブロンの方が上回っている。たぶん、ジョーダンより上の位置にいる」と自身の見解を述べた。
今年の11月8日(同7日)のバックス戦終了時、レブロンはレギュラーシーズンの出場試合数が1072試合となり、ジョーダンと並んだことで話題になった。ピペンが言うように、シーズンMVPはジョーダンの5度に対してレブロンは4度、ファイナルMVPはジョーダン(6度)に対してレブロンは3度と開きがあるのは事実。
ただし、ピペンが指摘したように、得点ではなく、リバウンドやアシストという部分では、ジョーダン(平均6.2リバウンド5.3アシスト)よりもレブロン(平均7.3リバウンド7.1アシスト)が上回っている。また、レブロンはキャリア平均27.0得点7.0リバウンド7.0アシスト以上を残すNBA史上唯一の選手でもある。特に通算アシスト数では歴代12位、現役でもクリス・ポール(ヒューストン・ロケッツ)に次ぐ2位という数字を残している。
とはいえ、レブロンが「俺はマイク(ジョーダン)を上回ったと思う」と発言することはないだろう。レブロンは現役である限り、幼い頃からの憧れであるジョーダンが残した偉業という亡霊を追いかけているからだ。そのために、得点やリバウンド、アシストといった数字だけでなく、チーム・ケミストリーを構築すべく細部にわたってチームのためになることを実践し、リーダーシップを発揮する。ゲームにおけるあらゆる面で影響力をもたらしているのである。
2018年夏にフリーエージェント(FA)になって他チームへ移籍か、という報道もある中、レブロンは一日一日、キャブスを勝利へと導くべくプレーしている。「レブロンはチャンピオンシップを勝ち取るべく、今シーズンのことに集中している。適切と思える時になったら、様々なオプションから探っていくさ。でも今はその時ではない」と、代理人のリッチ・ポールは語る。
FAによる移籍だけでなく、ピペンが語ったジョーダンとの比較に対して、今後も報道は増え続けていくことだろう。だが、結論を出すには早すぎる。キャリア15年目の今季、12月14日(同13日)終了時点で、レブロンはフィールドゴール成功率(58.3パーセント)と3ポイントシュート成功率(42.2パーセント)、そして平均アシスト(9.0本)でキャリアハイのペースを記録している。12月31日(同30日)に33歳を迎えるレブロンは、より完璧な選手へと進化を遂げようとしているのかもしれない。
ジョーダン対レブロン——。人それぞれで意見は異なるだろうが、今はその結論を下すのではなく、今後も続くレブロンのキャリアを見届けようではないか。