昨季まで6シーズン、ロサンゼルス・クリッパーズに所属していたクリス・ポールが、1月16日(現地時間15日)にヒューストン・ロケッツの一員として古巣に戻って来た。
1時間後に試合を迎えるポールが向かったのは観客席。そこには少年少女ら57人が待ち構えていた。彼らは、低所得の家庭で育つ子どもをサポートする団体“Brotherhood Crusade”の援助を受け、将来の夢を広げる子どもたち。同団体の施設で勉強、スポーツはもちろん、ネクタイの着け方や食事を含めた社会でのマナー、また演技や音楽などを学んでいる。ポールもクリッパーズ所属時から同団体を支援しており、同施設にコンピューター・ラボを作り、ホリデーシーズンには子どもたちをショッピングに連れて行き、買い物させるイベントを行ってきた。
ネット上での宿題や勉強は、今やアメリカの小学校では低学年からやっているが、家庭にコンピューターがない子どもたちにとっては困難なことだ。しかし同施設に行けば自由にコンピューターが使える。またショッピングでは、「最低でも一人、誰かのためにプレゼントを買う」ことを規則とし、与えられることだけではなく、与えることの喜びも教えてきた。
このオフ、トレードでロケッツに移籍したポールは、ロサンゼルスを離れる前に同施設に寄って子どもたちに別れの挨拶をしていた。約半年ぶりとなる再会で子どもたちを励まし、「MLKデー(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師記念日)にみんなに会えて、プレーできるなんて最高だよ」と満面の笑顔を見せていた。
試合では最初のタイムアウトでクリッパーズ所属時の偉業を称えるビデオが流れ、会場から大歓声を得た。しかし、試合が深まるに連れ戦いはより感情的でフィジカルになり、激しく言い合う場面も。そしてその争いには昨季までともにクリッパーズを引っ張っていたブレイク・グリフィンとポールの姿もあった。
Thank you, @CP3. 🙌#MLKDay pic.twitter.com/3hOnuwKsrC
— LA Clippers (@LAClippers) January 16, 2018
ポールが去った今季、クリッパーズを取り巻く環境は変わった。毎試合後行っていた会見場での会見は、特別な場合を除きドク・リバースHCのみとなり、あとはロッカールームでの囲み会見となった。毎試合満杯に埋まっていたスタンドには空席が目立っているし、チームの評価も高くない。
もちろんこれらの理由には、ポール以外で抜けた選手の影響もあるのだが、これらの様子を目の当たりにするたび、ポールが抜けたことを再認識させられる。
せっかくの凱旋試合も、後味の悪い幕切れとなった。しかし、これがポールとクリッパーズの本当の別れを意味していたのかも知れない。
「(試合前に)子どもたちと喋ることができたのが一番良かった」
少年たちとの思い出だけを胸に、ポールはロサンゼルスを後にした。
文=山脇明子