プレーできないフラストレーションから起きた裂傷
ボストン・セルティックスでベンチからタフなディフェンスとパッション、アグレッシブなオフェンスを持ち込むマーカス・スマート。
193センチながら100キロを超えると言われる筋骨隆々の肉体と、抜群のフットワークを活かし、大きなプライドを持ってディフェンスに取り組む熱い男である。自身より背の高いガードの選手たけでなく、2メートルを超える長身のフォワードに対しても臆せず立ち向かい、相手選手のショットを防ぐことはもちろん、ブロックしたりスティールしたりと、コート上で大きなインパクトを残すことのできる選手である。
そのスマートは右手の裂傷により、1月24日(現地時間23日)から戦列を離れているのだが、2月22日(同21日)に現地メディア『ESPN』に対して、コートでプレーできないフラストレーションから、ガラスの額縁にパンチする“2度目の裂傷”があったことを明かした。
「ドクターたちからは、『シーズン終了となる重傷になるところを、ほんの少しかすれただけ』と言われた。もし手術することになったら、今季終了となっていただろうね。もう毎日、神に感謝しているよ。このくらいで済んで、本当に良かった」とスマート。
事の発端は、右手の裂傷により欠場し始めた1月下旬のこと。原因についてスマートは「俺はコートに出てチームのためにプレーすることができなくて、精神的に打ちのめされていたんだ。だから誰かにヘルプしてほしかった」と答えた。そして「なにしろ俺は競争者だからね。多分、リーグでプレーしている選手に聞いてもほとんどがそう答えるだろう。でも俺は、こうして汚名返上するチャンスを得ることができたんだ」と、自身の激しい闘争心から生まれたアクシデントだったと語っている。
セルティックスにリーグトップレベルのディフェンス力を持ち込む男
セルティックスは今季、ここまでリーグトップのディフェンシブ・レーティング(100.9)を誇っているのだが、スマートが不在だった1月下旬以降の11試合に限ってみると、その数字は105.2まで悪化。チーム成績も6勝5敗にとどまっていた。
チームメートのアル・ホーフォードは「マーカスはチームに戻ることに対してエキサイトしていたんだと思う。彼が戻ってくることで、我々のディフェンスははるかに良くなるのは間違いないよ」とスマートをフォロー。
カイリー・アービングもスマートについて「彼はゲームにおいて、オフェンスとディフェンスの両エンドでとてもユニークなものをプラスしてくれる。彼は相手ディフェンスを崩壊させて、彼自身のみならず、俺たちのためにも(得点する)チャンスをクリエイトしてくれる。彼がディフェンス面でどれほどすばらしいかは、皆も知っているよね。俺たちのチームに彼がもたらすものはすばらしいと思う。他の選手とは比較できないものなんだ」と語り、絶賛している。
ラストはブラッド・スティーブンズHCのコメント。「彼はこの4年間、我々のチームにおいてカギとなる役割をこなしている。彼が今日、練習に参加できてよかった。彼がいることで、エナジーレベルは常に上がるんだ」と答えていた。
「これから始まる後半戦は、俺たちのチームにとって非常に重要なものになる」というスマートの言葉は、チーム全体で共通認識を持っているだろう。
後半戦にスマートが復帰することで、バックコートの選手層は一段と厚くなり、ディフェンス力も脅威を増すに違いない。そしてその中心に、アグレッシブな姿勢で相手チームへ立ち向かうスマートの姿があるはずだ。