オールスター初選出のオラディポと先発PGに定着したディンウィディー
NBAには最優秀選手賞(MVP)に新人王(ROY)、最優秀ディフェンシブプレーヤー賞(DPOY)、最優秀シックスマン賞といった数々のアワードがあるのだが、毎年予想は難しく、本命不在のシーズンでは特に迷いがち。
最優秀躍進選手賞(MIP)もその1つで、昨季から最も躍進した選手に与えられる同賞は、開幕前に予想した選手ではなく、思わぬ成長を見せた選手が受賞することが多々ある。
今季、その有力候補としてこれまで挙がっていたのはビクター・オラディポ(インディアナ・ペイサーズ/ガード)だ。オクラホマシティ・サンダーからトレードでペイサーズへ移籍したオラディポは、2月22日(現地時間21日)終了時点で平均34.6分に出場し、平均24.4得点5.3リバウンド4.1アシスト2.1スティールをマーク。得点とリバウンド、スティールは自己最高ペースで、ペイサーズをイースト5位(33勝25敗)へとけん引し、自身初のオールスター選出を果たした。平均得点は昨季から約8得点も上昇しており、最有力候補と言っていいだろう。
そんな中、ブルックリン・ネッツのスペンサー・ディンウィディー(ガード)が対抗馬に名乗りを上げてきた。今年のオールスターに行われた「スキルズチャレンジ」で優勝したディンウィディーは、キャリア4年目をプレーする198センチの大型ポイントガード(PG)。最初の2シーズンはデトロイト・ピストンズに所属していたが、Dリーグ(現Gリーグ)とNBAを行き来することが多く、期間中はわずか46試合の出場のみで、平均4.4得点2.7アシストだった。
ところがネッツに加入した昨季、徐々にプレータイムが増えたことで59試合(うち18で先発)に出場し、平均7.3得点2.8リバウンド3.1アシストをマーク。そして今季は、ディアンジェロ・ラッセルがケガにより離脱した11月中旬から先発ポイントガードに定着。ここまで計58試合(うち48試合で先発)に出場し、いずれも自己ベストとなる平均13.6得点3.3リバウンド6.7アシストを記録し、主力としてチームに不可欠な存在となった。
今季A/TO比率でリーグトップを誇る苦労人はMIP獲得なるか?
現地メディア『The Athletic』のマイケル・スコット記者はディンウィディーについてこのように語っている。
「スペンサー・ディンウィディーこそが、リーグで最も躍進した選手になり得るだろう。私はオラディポがMIP賞を勝ち取ると思っているが、ディンウィディーは2016年に(シカゴ・)ブルズを2度も解雇され、Dリーグ(現Gリーグ)でもプレーしてきた。それが今季は、正式なスターターとしてプレーしている」。
ディンウィディーにとって一番の強みとなっているのは、ミスの少ない堅実なプレーだ。今季は平均6.7アシストに対して、ターンオーバーはわずか平均1.6本。A/TO(アシストとターンオーバーの比率)では堂々リーグトップの4.18を記録している。
ネッツはイースト13位(19勝41敗)のため、チーム成績ではオラディポ率いるペイサーズに軍配が上がるものの、MVPやDPOYと違って、MIPは成績上位のチームから必ずしも選ばれるわけではない。
そのため、2月23日(同22日)から始まった後半戦で、どれだけの活躍ができるかがMIP賞の行方を左右することとなる。ディンウィディーはチームから解雇通告を受けた経歴があり、下部リーグでもプレーしていた苦労人だけに、MIP賞を獲得できれば本人も大喜びすることだろう。