プレーオフでバードが保持していたフランチャイズ新人記録を塗り替えた男
昨年のドラフト1巡目3位でボストン・セルティックスから指名されたジェイソン・テイタムは、203センチ94キロのフォワードとしてルーキーシーズンから先発に定着。
80試合すべてに先発スモールフォワードとして出場したテイタムは、平均30.5分13.9得点5.0リバウンド1.6アシスト1.0スティールを記録。当時19歳だったものの、ショット全般の精度も高く、新人王候補にも挙がっていた。
ただ、昨季はベン・シモンズ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)とドノバン・ミッチェル(ユタ・ジャズ)という強力なライバルがいたこともあり、テイタムは新人王投票3位に終わっている。
それでも、カイリー・アービングとゴードン・ヘイワードを欠いたプレーオフで、テイタムは大活躍。平均35.9分18.5得点4.4リバウンド2.7アシスト1.2スティールをマークし、NBAファイナル進出まであと1勝に迫る快進撃に大きく貢献。
プレーオフ期間中、テイタムはラリー・バード(元セルティックス)が持つ新人記録、4試合連続20得点以上を7試合連続に塗り替えただけでなく、新人プレーオフ総得点で歴代1位のカリーム・アブドゥル・ジャバー(元ロサンゼルス・レイカーズほか/352得点)に次ぐ351得点をたたき出した。
オフシーズンにはコービー・ブライアント(元レイカーズ)とワークアウトを行ったり、アンファニー“ペニー”ハーダウェイ(元オーランド・マジックほか/現メンフィス大HC)との練習をこなすなど、貪欲にスキルアップを図った。
戦力面では充実も、ピアースの後継者となるためにはさらなる躍進が不可欠
そうして迎えた今季、テイタムはシクサーズとの開幕戦でチームトップの23得点を奪い、早速勝利の立て役者になると、その後も順調に得点を重ねている。
テイタムは11月10日(現地時間9日)のユタ・ジャズ戦を皮切りに、19試合連続で2ケタ得点を記録中。12月21日(同20日)終了時点で平均31.3分16.7得点6.5リバウンド1.7アシスト1.0スティールをマーク。チームトップの平均22.9得点を残すカイリーのインパクトには及ばないものの、第2の得点源として活躍している。
12月22日(同21日)、テイタムは現地メディア『ESPN』の記者から「NBAでどんな遺産を残したいか」と聞かれ、こう答えた。
「僕はポール・ピアース(元セルティックスほか)の後継者になりたい。僕はキャリアすべてをここで過ごし、チャンピオンシップを勝ち取り、ボストンの街が愛してくれる、そんな選手になりたいんだ」。
キャリア19シーズンのうち、最初の15シーズンをセルティックスでプレーしたピアースは、入団時からエーススコアラーとして活躍したレジェンド。チーム成績が芳しくない時期もあったが、07年夏に超大型トレードでケビン・ガーネット(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)とレイ・アレン(元セルティックスほか)を獲得して“ビッグ3”を形成。
翌07-08シーズンには、フランチャイズ史上17度目となるチャンピオンシップをボストンにもたらした。ピアースは08年のNBAファイナルで平均21.8得点4.5リバウンド6.3アシスト1.2スティールをマークし、ファイナルMVPを獲得。セルティックスに所属した15シーズンで、ピアースは憎たらしいまでの勝負強さを発揮して幾度も勝利へと導いてきた。
カイリーやアル・ホーフォードをはじめ、豪華戦力を誇る現状のセルティックスでプレーするテイタムと、プレーオフに初出場したのがキャリア4年目と、弱小チームだった時の得点源としてプレーしていたピアース。
2年目の両者を単純比較することはできないものの、確実に言えるのはテイタムにはチャンピオンシップを獲得するチャンスがあるということだろう。
ただし、個人成績で見てみると、やはりピアース(平均35.4分19.5得点5.4リバウンド3.0アシスト2.1スティール)に分がある。当時のセルティックスは、アントワン・ウォーカー(元セルティックスほか)がチームトップの平均20.5得点を挙げてピアースとのダブルエース体制を敷いていたとはいえ、テイタムを上回るインパクトを残していた。
今後、テイタムはキャリアを積むことで、セルティックスの絶対的なエースへと開花するのか。それは今後のパフォーマンスにかかってくることとなる。まずは今季、どこまでセルティックスは勝ち上がることができるのか。優勝を勝ち取るべく、成長を続けるテイタムのプレーに注目したい。