アグレッシブに切り替えた第3戦以降の4試合で平均19.3得点8.0アシスト
キャリア13シーズン目となった今季、トロント・ラプターズの最古参カイル・ラウリーは直近6シーズンでワーストとなる平均14.2得点にとどまっていた。
ラプターズは昨夏、ラウリーの親友であり、長年エースを務めてきたデマー・デローザン(とヤコブ・ポートル)をサンアントニオ・スパーズへ放出し、カワイ・レナードとダニー・グリーンという実績のある選手を獲得。
今季、ラプターズはラウリーの周囲に新加入のレナードとグリーンを据え、ベテランのサージ・イバカと3年目の若手パスカル・シアカムの5人でスターターを形成。シーズン途中にメンフィス・グリズリーズからマルク・ガソルを獲得すると、シーズン終盤からプレーオフまで、イバカの代わりにガソルを先発に加えて戦い抜いた。
複数のスコアラーを得たことで、ラウリーは開幕から2ケタアシストを連発。一時はリーグトップのアシストを記録するなど新たなスタイルを構築し、終わってみればキャリアハイの平均8.7アシストをマーク。
プレーオフに入っても、ラプターズはレナードとシアカムという両フォワードが得点源として大暴れ。ラウリーは平均2ケタ得点を残しつつ、アシストや身体を張ったリバウンドやテイクチャージなどで貢献してきた。
そうして迎えたゴールデンステイト・ウォリアーズとの「NBAファイナル2019」。ラウリーは最初の2戦こそ平均10.0得点5.5アシストに終わるも、「もっとアグレッシブにショットを狙う」と誓った第3戦以降の4試合では平均19.3得点8.0アシストと急上昇。
特に第6戦では試合開始からドライブと3本連続で長距離砲を放り込み、わずか2分12秒間で11得点。NBAファイナル史上最速で2ケタ得点をたたき出すと、その後も得点やアシスト、リバウンドを奪い、終わってみればシリーズベストの26得点7リバウンド10アシスト3スティールの大活躍でラプターズ初優勝を大きく後押しした。
「チームメートたちと家族と共に優勝を祝福することができてすごくうれしい」
ラプターズはレナードの平均28.5得点を筆頭に、シアカム(同19.8得点)、ラウリー(同16.2得点)、フレッド・バンブリート(同14.0得点)、ガソル(同12.0得点)、イバカ(同11.3得点)と、計6選手が平均2ケタ得点を挙げるバランスアタックで王者ウォリアーズをねじ伏せた。
『Elias Sports Bureau』によると、ファイナルのシリーズ全体で6選手が平均2ケタ得点を挙げたのは、1987年のロサンゼルス・レイカーズ以来、実に32年ぶりの快挙だったという。ウォリアーズ相手に、毎試合ラプターズは複数の選手が2ケタ得点を奪い、的を絞らせないオフェンスを見せつけたと言っていいだろう。
優勝決定後、「僕らのことを見て、僕らの近くにいることで、このチームには本物のプロフェッショナルが数多くいることがわかるはずだ。(このチームは)決して落ち込んだりしない。そして僕は、自分が必要とされていることをチームのためにやってきたんだ」とラウリーは『ESPN』へ語っている。
シリーズの中で、ラウリーは何度もファウルトラブルに陥り、ベンチへ下がる場面もあったのだが、コートではルーズボールにダイブし、テイクチャージを奪うなど献身的なプレーでチームを支え、ショットが不調でもアシストでチームメートたちの得点機会を数多く演出してきた。
「この瞬間に自分がいることができて感謝している。チームメートたちと家族と共に優勝を祝福することができてすごくうれしいよ」と満面の笑みを浮かべたラウリー。
185センチ88キロのラウリーは、これまで「動きが遅い」「小さすぎる」「小柄なシューティングガード」「プレーオフで勝ち切れない」といった批判を何度も浴びてきた。「それでも僕は自分を信じてきた。(批判してくる人たちへ)それが間違っていると証明することが僕の仕事だったんだ」と明かすほど、批判を受けてきたのだが、初優勝を勝ち取ると、自信満々にこう言い放った。
「(僕に対して)批判する人たちは、また何か言ってくるだろうね。でもどうなろうと構わないさ。だって僕はチャンピオンなんだから」。
苦節13年。ラプターズのリーダーとして7年間を費やしたものの、この優勝はラウリーにとって、キャリアの中でも最高の部類に入る瞬間だったに違いない。