「すばらしい選手」と評するも、カリーをベスト5に選ばなかったジョーダン
10月22日(現地時間21日)。シャーロット・ホーネッツのオーナーであり、NBA史上最高の選手と称されるマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)が『NBC』の番組“Today”に出演。
番組内でジョーダンは、理想とする夢のチーム(5人)について聞かれ、自身のほかにアービン“マジック”ジョンソン、ジェームズ・ウォージー(共に元ロサンゼルス・レイカーズ)、スコッティ・ピペン(元ブルズほか)、アキーム・オラジュワン(元ヒューストン・ロケッツほか)の名を挙げた。
マジックは1992年のバルセロナオリンピックにアメリカ代表として出場した“ドリームチーム”のチームメートであり、91年にはNBAファイナルを競い合ったライバル。ウォージーはノースカロライナ大学の先輩で、ピペンは90年代にブルズで6度の優勝を成し遂げた当時の相棒。オラジュワンはジョーダンとプレーオフで戦うことはなかったものの、94、95年にロケッツを2連覇へと導いた殿堂入りセンターである。
そんな中、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)について聞かれたジョーダンは「彼はすでにすばらしい選手」と評したものの、「でも彼はまだ殿堂入りするような選手ではない。彼はそうじゃないね」と発言したことで注目を集めた。
現役時代に6度の優勝をはじめ、5度のシーズンMVPに6度のファイナルMVP、10度の得点王など、輝かしい功績を残してきたジョーダンと比較すると、キャリア10年で3度の優勝と2度のMVPを獲得してきたカリーはまだ“小粒”に映るのかもしれない。
とはいえ、近年のリーグをけん引しているカリーは、2010年代を代表する選手の1人であり、すでに歴代最高の3ポイントシューターとの呼び声も高いスーパースター。現時点における通算3ポイント成功数ではプレーオフ(470本)、ファイナル(121本)でいずれも歴代最多を記録しており、まだ31歳ということを考慮すれば、将来のバスケットボール殿堂入りは確実と言っていいはず。
そのカリーへ苦言を呈したジョーダンに対して「いくらなんでも厳しすぎ」「カリーは殿堂入りできる」といった声が飛び交ったのも無理はない。
もっとも、ジョーダンはこの発言をしている際に何度も白い歯を見せながら笑っており、“意味深”と捉えられてもおかしくはない様子だった。
マジックのフォローもある中「まだ証明しなきゃいけないことがある」とカリー
すると昨季終盤までレイカーズのバスケットボール運営部門代表を務めていたマジックが「皆、落ち着くんだ。ステフ・カリーが将来殿堂入りする選手なのは誰もが知ってること。マイケル・ジョーダンがそう言えなかったのは、リーグから罰金処分を食らうからだ」と絶妙なツイートでフォロー。
マジックは昨季、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)について絶賛すると、リーグからタンパリング(不正交渉)とみなされて罰金処分。2021年にフリーエージェント(FA)となるアデトクンボに対して、レイカーズへ勧誘していると判断されていた過去があるだけに、ジョーダンの立場を考慮していたと言っていい。
ジョーダンとカリーには、特筆すべき共通点こそないものの、カリーのホームタウンがホーネッツの本拠地シャーロット(ノースカロライナ州)という点は見逃せない。カリーは父デル(元ホーネッツほか)がクリーブランド・キャバリアーズ在籍時に生まれたものの、幼少期から大学時代までノースカロライナ州で過ごしていたため、ジョーダンが絶賛すれば「カリーのリクルートか?」とみなされて罰金処分になる可能性は十二分にあった。そんな状況下で、ジョーダンは最善を尽くしたと言うことができるはずだ。
現地時間23日。カリーは『Sole Collector』のインタビューで、ジョーダンの発言に対して「僕はそれでいいと思ってる。よく考えてみたら、僕はこれまで一度も自分に満足したことはないんだ」と返答。そしてこう続けた。
「僕にはまだまだ証明しなきゃいけないことがたくさんあることは分かってる。(ジョーダンのような)史上最高の選手からそんなことを聞けるなんて、なんだか面白いね。NBAという大きな舞台で、僕はすでに引退した選手たちからそういった意見を何度も耳にしてきた。ファンにとっては最高の話なんじゃないかな。僕は今、すごくいい状態にあるけど、まだまだ自分自身の能力を示していく必要があることは知ってるよ」。
ジョーダンからの批判とも受け取れるコメントに対して、冷静な対応を見せたカリー。もしこれが逆の立場であれば、ジョーダンはこれをモチベーションに変えて次の試合で50得点級の大暴れを見せていたに違いない。
はたして、カリーはこの発言に対してコート上でどんな答えを見せるのか。25日(同24日)に行われるロサンゼルス・クリッパーズとのシーズン開幕戦で、序盤から“アタックモード”に入ってNBA史上最多記録となる15本の3ポイントをリングに沈める可能性も決してゼロではないはず。
身体的にもメンタル面でも絶頂期にあるカリーが“ジョーダンの発言に対する返答”として、どんなパフォーマンスを発揮するのか。ぜひとも注目していただきたい。