「コービーは最もすばらしい夫であり、私にとって全てと言える存在」(妻ヴァネッサ)
2月25日(現地時間24日、日付は以下同)。カリフォルニア州ロサンゼルスにあるステープルズ・センターで、1月27日のヘリコプター墜落事故で命を落としたコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)とその次女ジアナを含む9名の追悼式が行われた。
約2万人が駆け付けた会場には、レイカーズのレジェンドであるジェリー・ウェストにアービン“マジック”ジョンソン、そしてカリーム・アブドゥル・ジャバー、シャックことシャキール・オニール(共に元レイカーズほか)、パウ・ガソル(現ポートランド・トレイルブレイザーズ コーチングスタッフ)が姿を現したほか、アダム・シルバー(NBAコミッショナー)、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)、フィル・ジャクソン元HC(ヘッドコーチ)といったそうそうたるビッグネームたちが参加。
現役ではステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)やジェームズ・ハーデン、ラッセル・ウェストブルック(共にヒューストン・ロケッツ)、カイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)らが集まった。
コービーの妻ヴァネッサは「彼女の笑顔はまるで太陽の輝きでした。コービーはいつも、彼女(ジアナ)は私のようだと言ってました」とジアナについて切り出すと、水泳やヒット曲を歌うこと、クッキー作り、『サバイバー』(アメリカのバラエティ番組)を観たり、NBAの試合を父親と観ることが大好きだったこと、バスケットボールを父のように心底愛していたことを明かすと、将来は「WNBAでベストプレーヤー」になることができていたかもしれないという思いを口にした。
「最もすばらしい夫」と評したコービーについては「彼は私のことを愛してくれました。これまで私が表現、言葉にしてきた以上に、愛してくれました。私が炎で、彼が氷、逆もしかりです。……彼は私にとって全てと言える存在でした」と告白。
会場には兄と慕っていたコービーのレガシーを引き継いだレブロン・ジェームズもおり、代理人のリッチ・ポールは「ジェームズにとって、今日は最も感情的な日だった」と『ESPN』へ明かしていたという。
「彼は可能な限り、ベストなバスケットボール選手になりたがっていました。そして私は、彼のことを知るにつれて、自分にできる限り彼をサポートする最高の兄になりたかった」とジョーダン
そしてこの日、最も多くの人の心を揺さぶったのはジョーダンだった。コービーが急逝したことを知り、「彼は弟のような存在だった」と声明文の中で語っていたジョーダンは「コービーと私が非常に親しい友人だったことに、おそらく多くの人たちが驚いたはずだ。だが我々は実に親しい間柄だったんだ。コービーは私の親友だった。弟のような男だったんだ」と明かし、こう続けた。
「コービー・ブライアントが亡くなったことで、私の一部も失われてしまいました。今ここにいる皆さん、そして世界中の人たちも、一部が失われ、ここにいることができなかったかもしれません。私たちはこの想いから学び、生きていくことになります。私も今日から、かわいい弟がいたという思いを胸に、生きていきます。わが弟よ、安らかに」。
涙を流しながら、可愛い弟コービーへの愛が詰まったスピーチで世界中のファンの感情を揺さぶったジョーダンだが、大観衆を前に絶妙なジョークを交えることも忘れなかった。
2009年にバスケットボール殿堂入りした際のスピーチで、ジョーダンは人目をはばからず涙を流していたのだが、その時に撮影された写真がインターネットを中心に出回り、ジョーダン本人の意志とは裏腹に、様々な状況下でSNSに乱用されていた。もちろん、ジョーダン本人はそのことを快くは思っていなかったのだが、この追悼式という状況下で、こんなジョークも飛び出していた。
「コービーはやってくれたよ。私はまた泣いているミーム(WEB上で拡散されるネタのようなもの)をこれから先、見ることになってしまうんだろうな。この先3、4年と、こんな写真を見たくないと妻には言ってたんだが、コービーにしてやられてしまったね」。
これには会場中から思わず笑いがこぼれ、カリーは下を向いていたものの、今にも笑い転げそうな様子をカメラに抜かれていた。だがジョーダンが口にした言葉の数々は、コービーへの愛にあふれたものであり、まるで今年8月末に行われるコービーの殿堂入り式典でプレゼンターを務めているかのようだった。
「彼は可能な限り、ベストなバスケットボール選手になりたがっていました。そして私は、彼のことを知るにつれて、自分にできる限り彼をサポートする最高の兄になりたかった」。
コービー・ブライアントというバスケットボールに全てを捧げてきた男は、間違いなく後世に語り継がれる偉大な選手。この先、3か月、半年、1年と月日が流れようと、コービーが残した功績の数々が色あせることはない。そして世界中の人々の記憶の中で、コービーは生き続けていくに違いない。