人生には、怖さがつきものだ。例えば、高所、あるいは昆虫が苦手な人たちは一定数存在する。フィラデルフィア・セブンティシクサーズのベン・シモンズの場合、彼はスリーポイントを含む“ジャンプショット恐怖症”なのかもしれない。
若干24歳にして、得点、アシスト、リバウンド、スピード、フィジカルなど、PGに必要な能力値の全てがトップクラスに達しているシモンズ。しかし、唯一の弱点として度々指摘されているのが、現代バスケの必須スキルとも言えるスリーポイントショットである。
フィリーのブレット・ブラウンHCは現在、未来ある#25をPFでテストしている。そして、同選手はオープンエリアでの起用に応えるように、練習試合でコーナーからスリーポイントを沈めた。これにはジョエル・エンビードを含め、ベンチも総立ち。また、1試合で2本のアテンプトがあったのはキャリア初のことで、シモンズの姿勢の変化にはブラウンHCも「パラダイムシフトだ」とし、さらなる成長に期待を寄せた。
It’s pretty. It’s so pretty. pic.twitter.com/KmVjKlGrmB
— Philadelphia 76ers (@sixers) July 25, 2020
本人もスリーポイント向上の必要性を理解
誰より、スリーポイント向上の必要性を理解しているは、シモンズ本人だろう。彼はスリーポイント習得論について、「いつか向き合わないといけないことは理解している」とコメント。また、「僕にとっての問題は、気持ちよく打つことができるかだ。そのために、練習を重ねている。エルボーからのフックショットは、何度も練習して自信をつけた。それは自然なことだよ」とトレーニングの必要性を強調。
「スリーポイントは、それと同じ段階にはないことを強調しておきたい。30%の成功率でいいなら、いつでもシューターになれる。でも、俺は40%成功できる選手になりたいんだ」
しかしながら、メンフィス・グリズリーズ、オクラホマシティ・サンダーとの練習試合で決めた得点は、グリズリーズ戦のスリーポイント以外、全てドライブインやゴール下での得点だったのも事実。コンバートでオフェンスオプションには幅が出たものの、未だジャンプショットに課題を抱えることには変わりはない。1on1でもジャンプショットのオプションがないため、ディフェンスとの駆け引きに不利が生じ、結果として得意のアシストにシフトする場面が多々見られた。
シモンズのジャンプショット問題には、技術面以上にメンタル的な問題があるのかもしれない。『ESPN』によると、同選手は現在、スポーツ心理学者と協力して改善のためのアドバイスをもらっているという。
ちなみに、『ClutchPoints』の調べでは、シモンズは2016年のNBAドラフトで1位指名を受けて以来、わずか23本しかスリーポイントを放っていない(成功数は2本)。だが、裏を返せば、もしシモンズが今後1、2年でスリーポイントやジャンプショットを習得すれば……。間違いなく、レブロン・ジェームズらに匹敵するスター選手へと成長を遂げるだろう。
コービー・ブライアントは生前、シモンズに「彼はジャンプショットを身に付けなきゃならない。もしこのままでは、キャリアを終える時にきっと後悔するだろう」とエールを送っていた。当時は「みんなが言っていること」と気にも止めていない様子のシモンズだったが、そろそろ本腰を入れるときがやってきたのかもしれない。
文=Meiji