レギュラーシーズンの終了に伴い、NBAは個人賞の発表を開始している。
前年から最も著しい成長を見せた選手に贈られる最優秀躍進選手賞(MIP)は、ニューヨーク・ニックスを2013年以来8年ぶりのプレーオフに導いた立役者、ジュリアス・ランドルが受賞。また、ベンチスタートの選手の中で最も活躍をした選手を讃えるシックスマン賞には、1試合平均18.4得点という抜群の安定感でチームの得点源を担ったユタ・ジャズのジョーダン・クラークソンが輝いた。
実はこの2人、2014年にNBA入りを果たした同期であり、ロサンゼルス・レイカーズからキャリアをスタートしている。苦労の多いルーキーイヤーからの4年間を切磋琢磨した仲ということもあり、両者は今でも友好な関係を築いている様子で、今回の個人賞受賞でも互いに祝辞を贈りあっている。
6TH MAN!! Congrats to you fam. It’s been a journey bro let’s keep going!! https://t.co/OHnknEAz73
— Julius Randle (@J30_RANDLE) May 26, 2021
クラークソンとランドルはコービーの教えを胸にトップ選手にまで成長した
さらに、ランドルとクラークソンには、もう1つの共通点がある。それは、レイカーズのレジェンド、コービー・ブライアントが、現役最後の試合のコート上で抱きしめた最後の選手ということだ。
コービーが60得点を決めた最後の一戦、ラストプレーはクラークソンへのタッチダウンパスだった。残り4.1秒、対戦相手のジャズはタイムアウトをコール。このプレーを最後に、コービーは大歓声のなかベンチへと下がることになるのだが、コートを去る直前に熱い抱擁を交わしたのが他でもない、ランドルとクラークソンだった(もう1人はディアンジェロ・ラッセル)。
コービーの若手からの人望の厚さはもとより、「頼むぞ」という想いで自分のいないレイカーズを担う“弟”たちを力強く抱きしめたコービー。ランドル、クラークソンは現在活躍の場を移しているが、そんな2人が経験を重ね、数ある選手の中から名誉ある個人賞を受賞したと思うと、目頭が熱くなってくる人も多いのではないだろうか。
重要な局面でも臆することなく得点を狙いに行くクラークソンの姿勢はコービー譲りのものであり、同選手はブラックマンバを師として仰いでいる。今年1月、クラークソンはジャズの公式HP内でコービーとの思い出を回顧し、「彼は、僕がルーキーとしてリーグに入ってきた直後から、僕のキャリアを気にかけてくれました。試合に向けた準備や、そこで何をすべきかという細かな点について、僕は全然理解していなかった。彼は本当に親切に、すべてのことを教えてくれました。コービーは僕のすべてなんです」と、感謝を述べている。
無論、ランドルにとっても、コービーは特別な存在だ。ランドルは最近、「ESPN」の名物記者エイドリアン・ウォジナロウスキーとの会話のなかで「正直、俺は毎日、コービーのことを考えている」とコメント。そして、「俺のこれまでの道のりと現在の状況を考えると、彼はきっと、俺のことを誇らしく思ってくれるはずだよ。叶わないけれど、今の俺を見てほしかった。電話やメールでアドバイスをもらえたら、どれだけ良かったことか。文字どおり、俺は本当に毎日、彼のことを考えているんだ」と続け、天国で見守るレジェンドへの愛情を語っている。
コービーの教えを胸に、NBAのトップ選手にまで成長を遂げたランドルとクラークソン。2人もまた、紛れもないマンバメンタリティの継承者なのだ。
文=Meiji