7月26日に行なわれた東京オリンピック 5人制バスケットボールのグループCの初戦で、スロベニア代表が118-100でアルゼンチン代表を下してみせた。
オリンピック初出場となったスロベニアは、オリンピック最終予選を勝ち上がり、初めてこの檜舞台に立ったとはいえ、難敵アルゼンチン相手に30点差をつけるなど圧倒。
「私は2年前、彼がNBAを含めて世界のベストプレーヤーだと言った。そして今、私の中では全く疑うことはないし、異論を唱える者はいないだろう。彼こそが世界のベストプレーヤーだ」。
試合後、アルゼンチン代表のセルヒオ・エルナンデスHC(ヘッドコーチ)が語った‟彼”とはもちろん、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)のこと。「彼が我々をたたきのめしたんだ」と同HCは続け、さらに「我々は普通の選手と共にできる限り全てを出して抑えようとした。でもね。彼は普通の選手じゃないんだ」と、まるで白旗を揚げるかのような言葉を残していた。
それもそのはず。22歳の神童は試合序盤に左コーナーからルイス・スコラ相手にステップバックスリーを放り込むと、何と3本連続で長距離砲をヒット。その後も独特の間合いからショットをねじ込み、チームメートたちの得点機会も演出。オフェンシブ・リバウンドから追加点を挙げるなど点を積み重ねていき、前半だけで31得点。
終わってみれば、ドンチッチは48得点11リバウンド5アシスト3ブロックと衝撃のオリンピックデビュー。1988年にオスカー・シュミット(ブラジル)が残した歴代最多記録の55得点には届かなかったものの、76年にエディ・パルビンスカス(オーストラリア)がマークした48得点と並んで歴代2位タイという快記録をたたき出したのである。
前半を終えて31得点だったこともあり、スロベニアのゾラン・ドラギッチは「ベンチでは皆そろって彼に言っていたんだ。『新記録を狙えよ』ってね」とドンチッチへ話していたものの、続けて「でもそれは問題じゃない。大事なのは試合に勝つことだから。それは彼も知っている。まだ22歳なんだからクレイジーなことさ」と話し、勝利することを最優先にしていたという。
涼しい顔をしながら超絶プレーを連発し、アルゼンチンをねじ伏せたドンチッチ自身も「記録には興味がない。僕らは勝ったんだ。そのためにここへ来たんだ」とコメント。オリンピック初戦で母国を勝利へと導いたことは、ドンチッチにとってもうれしかったに違いない。
そのスロベニアが次戦で相まみえるのは日本代表(29日)。抜群のシュート力とバスケットボールセンス、ほれぼれするようなパスワークでコート上を支配する神童を相手に、どこまで応戦することができるか注目していきたい。