いよいよカンファレンスゲームに突入した全米大学体育協会(NCAA)1部のバスケットボール。渡邊雄太が所属するジョージワシントン大学はノン・カンファレンスゲーム最後の2試合を連勝して7勝6敗と勝率5割以上で終えると、12月31日(現地時間30日)のカンファレンスゲーム初戦でセントジョセフス大学を相手に70-64で勝ち、幸先の良いスタートを切った。
It's a Yuta Steal & Slam, AND the foul! pic.twitter.com/62zyPUiPzD
— GW Men's Basketball (@GW_MBB) December 30, 2017
セントジョセフス大戦後、同チームの公式Twitterに投稿された日本語のインタビューで渡邊は、「プレシーズンのランキングで僕たちは下の方にランキングされていたので、それは僕のモチベーションにもなっていますし、チームとしてもモチベーションとなっているので、僕たちがすべきことはランキングをつけた人たちに間違っていたと証明して、最後はA10(ジョージワシントン大が所属するアトランティック10カンファレンス)で優勝するということ」と話していた。
今季が大学最後のシーズン。モーリス・ジョセフヘッドコーチは、チームのキャプテンの1人である渡邊について、「彼はこのチームで自分が何をしなければならないかわかっている。リーダーでなければならないし、声も出さなければならない。オフェンスだけでなく、ディフェンスでもチームを引っ張らなければならない。それを認識して毎日取り組んでいる」と話す。
実際渡邊は、「自分は性格的にあまりみんなに声をかけて常にやるという感じじゃないんですけど」と言う。しかし過小評価されていることを示そうとするチームの大黒柱として、「そんなことも言っていられないので、それは意識してやるようにしています」と語気を強める。
一方でプレーに関しては、チームの先頭に立つことは困難なことではない。
セントジョセフス大戦ではチーム最多の18得点9リバウンド。渡邊の3ポイントシュートで前半残り10分43秒に22-10と好スタートを切ったジョージワシントン大は後半も最大18点差をつけて勝った。
ノン・カンファレンスゲーム最終試合となった12月24日(同23日)のハーバード大戦ではフィールドゴール10投中成功は2本のみの5得点と不調に終わったが、相手に5点差まで追い上げられた後半、ジョージワシントン大が10連続得点してリードを15点と広げた際にファストブレイクからのダンクでチームを盛り上げ、3ポイントシュートで連続得点を締めたのが渡邊だった。
11月に取材をした時、渡邊は「(シュートが)入らなくてもとにかく積極性を忘れず攻め続けようと思っています。自分の出来、不出来関係なくチームを引っ張っていけるのがリーダーだと思っているので」と話していた。不調の中でも決めるべき時に決め、チームが勢いに乗るきっかけを作る意地を見せたところに渡邊のリーダーとしての自覚が伺える。
渡邊の18得点11リバウンドの活躍で勝ったニューハンプシャー大戦から3連勝しているジョージワシントン大が最後に負けたのは、同時点で8戦全勝、AP全米ランキング6位だったマイアミ大(12月17日、同16日)。50-59で敗れたのだが、それまで1試合平均79.3得点で、1試合平均22.1点差で勝っていたチーム相手に健闘。渡邊も9得点ながら8リバウンド、2ブロックでチームを助けた。
この試合を前にマイアミ大のジム・ララナーガHCはジョージワシントン大について、「まず、彼らはホームで非常にいいチーム。地元の応援がすごいに違いない。そして第2に年長の選手がいることだ。あのチームにはユウタ・ワタナベがいる。彼は(身長)6-9(約206㎝)だが万能のディフェンダーで、昨季(チームの得点源の一人であるガードの)ジャクアン・ニュートンについた。人は彼のことを全米でトップ10に入るディフェンダーだという。だからそれも一つだ。我々は、6-9の選手をポイントガードにつけるチームと対戦する」と話した。
シーズンを重ねるごとに向上し、今ではジョージワシントン大のエースとして存在する渡邊。その実力を知るのはララナーガHCのみでなく、戦う敵チームすべてであり、渡邊のプレーをみっちりと研究して臨んでくる。
「それはすごく感じます。オフェンス面で自分が持ちたいところでボールが全然持てませんし、ディフェンス面でも、抜かれても追いかけてブロックというのが今まで出来ていたんですけど、それをいい選手になると交わしてきますし…。両方の面でもっと良くならないとこれから厳しくなるかな、っていうふうに思っています」と渡邊。
しかし、目標であるNBAでプレーするために「もっと引き出しを増やさないと」と課題を挙げる渡邊にとって、そのような壁はうれしいチャレンジだ。
「アメリカのディビジョン1というレベルで相手に自分が研究されているというのは相手が自分のことを警戒してくれている証拠ですし、そこを打開できた時に新たな成長が待っているのかなっていう風に思っています」と話した渡邊。「自分がやるべきことをしっかりやって、もっと上手くなって、相手の研究のさらに上を行けるようにしていきたいです」と目を輝かせた。
文=山脇明子