馬場雄大が初めてアメリカで過ごしたシーズンを回想「自分の生きる道を再確認できた」

NBLのメルボルン・ユナイテッドでプレーすることを発表した馬場[写真]=Getty Images

「『自分がやってやるんだ』という気持ちをアメリカのバスケで感じました」

 7月19日。日本代表の馬場雄大が、来シーズンをNBLのメルボルン・ユナイテッドでプレーすることを発表した。

 馬場は20日に日本バスケットボール協会で会見を行ったのだが、ここではワシントン・ウィザーズの公式Twitterアカウントへ20日に公開された「ウィザーズ グローバル ポッドキャスト」内のインタビューからいくつか紹介していきたい。

 NBLはオーストラリアとニュージーランドの計9チームで構成されるプロバスケットボールリーグ。特にFIBAランキング3位のオーストラリアは、2016年のリオデジャネイロオリンピックで4位、昨夏中国で行われたFIBAワールドカップでも4位に入った強豪国。

「今こういう状況で、アメリカのNBAやGリーグが流動的になってしまったので、そこに合わせて準備しつつも、英語のところもふまえて、レベルの高いリーグでやりたいという思いから、オーストラリアという国を選択させてもらいました。チームから声がかかったことを光栄に思います」。

 インタビューでNBL入りを決断した理由についてそう語った馬場は、新天地について「数多くのNBA選手を輩出してますし、FIBAランクも相当上位な国なので、バスケットボールにすごい力を入れてますし、ワールドカップ本戦前にアメリカと直接対決するくらい、バスケットボールで注目を集めている国なので、レベルとしてはアメリカともそん色ないかなと思います」と口にし、「チーム力に加えて、フィジカルも相当なものだと聞いてます。アメリカとは少し違ったバスケットボールのスタイルになるのかなと思います」と答えていた。

 2018-19シーズン。馬場はBリーグのファイナルMVPに輝くと、19年夏にダラス・マーベリックスの一員としてサマーリーグに出場。今季はマブス傘下のGリーグチーム、テキサス・レジェンズでプレー。41試合(うち先発は5試合)に出場し、平均19.6分6.3得点2.6リバウンド1.2アシスト1.0スティールを記録した。

 アメリカで初めて過ごした1シーズンで学んだことについて、馬場はこう振り返っている。

「選手1人1人が自分のパフォーマンス、結果を出すことにすごいフォーカスしているように感じました。日本のバスケットボールというのは、いかにノーマークを探して、いかに味方へいいパスを出してシュートを打たせるか、というところにフォーカスするんですけど、そことは大きく違っていて。自分の意欲というところからさらにシュート確率の向上がアメリカではすごく高いです。気持ちの部分で迷いがない分、それを感じたので、『自分がやってやるんだ』という気持ちをアメリカのバスケに触れて感じました」。

フィジカルコンタクトの激しいNBLを新天地に選んだ馬場[写真]=Getty Images

「この身長、このポジションで、3ポイントの確率は100パーセント武器にしなきゃいけないと思ったんですよ。それをふまえて徹底的に練習しました」

 大変なこととして挙げたのは「シーズンの最初の頃、試合に出られなかったことですね。あとはそこで自分がどう感じてるか、思っていることをまだ英語も完璧ではなかったので、伝えきれなかったっていうのも大変なところでしたね」と話している。

 移動についても、GリーグはNBAのようにチーム専用のチャーター機ではないため、大変だったという。

「それこそ、僕は最初プレシーズンでNBAのチームでやらせてもらって、そのチーム独自のジェット機を使って。最初にラクな方を経験していたので、Gリーグに入って、エコノミーで朝早く移動とか、不定期に移動っていうのがあって、相当大変でしたね」。

 さらに「僕はダラスだったので、オクラホマ州だったり、(テキサス州)オースティンにはバスで行くことがあったりして、試合終わったらそのまま帰ってきて、次の日にまた移動もあったので、スケジュールに関しては、本当にはちゃめちゃでしたね」と馬場。

 遠征の際には2人部屋のホテルに宿泊していたものの、馬場はアメリカでの生活をポジティブに捉えていた。

「好きな時間に音楽もかけますし、生活のリズムは違ったんですけど、少し良かったかなぁと思うのは、自分がそういうことに対してストレスをあまり感じない性格だったので、そんな日々も楽しく過ごすことができましたし、違う国の人たちと時間をこれほど共にすることはなかったので、僕にとってはいい経験でしたね」。

 今季の馬場にとって、強みの1つとなっていたのが3ポイント。平均成功数は1.0本ながら、41.5パーセントという高い成功率を残していた。シーズンが進むにつれて、自身の中で変化も起きたという。

「アメリカに行って感じたことは、この身長、このポジションで、3ポイントの確率は100パーセント武器にしなきゃいけないと思ったんですよ。それをふまえて徹底的に練習しましたし、自分の中で、周りの選手が迷いなく打ってる中で、『僕はノーマークの選手へのパス、パスをファーストオプションにしていいのか』と考え直して、やっぱり自分も『打つところでは打つ、迷いなく打つ』っていうことを考えなければいけないっていうふうに思い始めて、メンタルが変わってきたことがシュート確率の向上につながったのかなと思います」。

馬場はGリーグで3ポイント向上にも努めた[写真]=Getty Images

 日本ではスモールフォワード(SF)をこなすこともあるのだが、アメリカではシューティングガード、少なくともガードというポジションを務めることが多いことから、馬場自身も生きる道が見えてきたようだ。

「(アメリカでは)SFで能力の高い選手が山ほどいましたし、それを見てきたので、『自分がこの世界で生きていくためには』と考えた時に、1番(ポイントガード)、2番(シューティングガード)のポジション、2ガードとして(1番を)サポートしたり、シューターの位置に立って3ポイントを決め切る、そこからの状況判断だったり、というのが自分の生きる道かなと再確認できたので、その道かなと僕は思ってます」。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、Gリーグは3月中旬に中断。その後中止となってしまったものの、NBA選手になることを目標とする馬場がアメリカで1シーズン戦い抜いたことに変わりはない。

 新たな舞台として選択したNBLで、馬場がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。今から楽しみでならない。

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