「川崎ブレイブサンダースは、リーグで一番強いチーム。常に安定して成績を残すプレーヤーがいて、周りの選手も自分たちの役割を理解している。でも、伸びしろがあるのは自分たちだと思っている」と語ったのはアルバルク東京の若き日本人エース田中大貴。好敵手に対する敬意は払いつつも、自分たちも負けてはいないという矜持をのぞかせた。
B1リーグ第14節、Bリーグ初のチャンピオンを占う大一番、川崎とA東京の対戦は106-92でA東京が勝利し、川崎の連勝を15でストップ。クリスマスイブのこの日、川崎市とどろきアリーナに3727名が詰めかけたリーグ屈指の好カードは、A東京が前日23日の雪辱を果たす結果となった。
23日はNBL時代からのライバルである川崎に81-93と苦杯を舐めたA東京。この日も好調を維持する川崎の辻直人、ニック・ファジーカスの活躍によって白熱した接戦を強いられたが、チームに昨晩との違いをもたらしたのは、この日大爆発した田中だった。
今やチームの顔にもなりつつあるディアンテ・ギャレットを中心に、竹内譲次、トロイ・ギレンウォーターなど実力者がそろう層の厚いチーム内において、田中に巡ってくる攻撃チャンスは決して多くはない。チームの成熟度と高いケミストリーを武器とする川崎に対し、個の力を前面に押しだすA東京。この構図において、田中はまさに個の力を発揮した。美しい放物線を描くアウトサイドシュートは次々にリングに吸いこまれ、積極的なドライブは川崎のディフェンスを切り裂いた。
「シュートが入る入らないは結果であって、自分がリングにアタックすること、リングに向かう姿勢は良かったと思う」と本人が語るとおり、その積極的な姿勢が、完成度で上回る相手の厳しいディフェンスを凌駕した。絶好調の田中は前半だけで25得点をマーク。重要な一戦の大切な序盤で、チームへ勢いをもたらす原動力となった。
「我々のやりたいゲームに近づけた試合だった」と試合後に充実した表情で振り返った伊藤拓摩ヘッドコーチは田中を手放しで称賛した。「大貴はアウトサイドも入っていたし、今季の課題であるリングに向かってアタックするプレーも、ディフェンスが寄ってきたら外にさばくプレーもうまくできていた」と勝利の立役者を高く評価した。
3ポイント5本を含む30得点を挙げ、2016年最後の試合を素晴らしい形で締めくくった田中は、変化の多かったこの年を振り返り「2016年はBリーグ全体が注目され、その分強い責任感を感じているし、期待に応えたいと思っている。2017年はもっともっと成長したい」とさらなる飛躍を誓い、新しい年への決意をにじませた。
文=村上成