A東京のザック・バランスキー、「ゲームで使っていた憧れの選手」を倒し準決勝へ

チルドレス(右)とのマッチアップを制したA東京のバランスキー(左) [写真]=B.LEAGUE

 5月14日に国立代々木競技場第二体育館で行われたB.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2016-17のクォーターファイナル、アルバルク東京三遠ネオフェニックスの第2戦。第1戦の勢いままに勝負を決めたいA東京だったが、高いエナジーでチーム一丸となった三遠に苦戦を強いられた。この厳しい状況をものにして、チームをセミファイナルへと導く原動力となったのが、チーム内でも1位、2位を争う勝負強さの持ち主、ザック・バランスキーだ。

 A東京は、集中力を切らさずに激しいディフェンスからトランジションゲームへと持ちこむ三遠を相手に、序盤から試合をコントロールされた。エースのディアンテ・ギャレットは、小兵ぞろいの相手ガード陣とのミスマッチを意識しすぎたのか、外からの3ポイントシュートを打たされ、自身のリズムを乱した。

 引きずられるようにチームオフェンスが停滞し、第2クォーターは田中大貴を使うプレーを増やして何とか三遠に食らいつくも、ペースを相手に握られたまま34-38と4点のリードを許して前半を終えた。

 第3クォーターに入っても、三遠のすばやく、組織だったディフェンスに活路が見いだせないA東京だったが、この苦しい状況を救ったのがバランスキーだ。敵将の藤田弘輝ヘッドコーチが試合後の会見で「チームとしては(必要な手を打った中では)どうしようもなかった」と語ったとおり、バランスキーはこの難しい状況下で、チームを救う3連続ポイントを沈めた。

 ギャレットのカットインに合わせてタイミング良くボールを受け、ゴール下へ切りこみ得点。続いて、ゴール周辺に収縮した三遠のディフェンダーを見て、外でボールを受けて3ポイントシュートを成功させた。最後は鹿野洵生田渡修人のダブルチームをものともせずフェイドアウェイジャンパー(後ろに下がりながらのジャンプしてシュート)を沈めて、逆転の糸口を作りだした。同じ時間帯で三遠の司令塔、鈴木達也が3ポイントを含む5連続得点を挙げており、バランスキーが1本でも外せば、流れが三遠に傾いてもおかしくない局面であった。

第2戦では2本の3ポイントを含む12得点をマーク [写真]=B.LEAGUE

 試合後の囲み取材において、バランスキーは「完全に僕のところでミスマッチが起こっていたので、強気に攻めていこうと思った。その結果として3本続けていいところでシュートを決められたと思う」と冷静に振り返った。バランスキーのここ一番での勝負強さについて問われた伊藤拓摩HCは「ザックはプレッシャーが掛かれば掛かるほど楽しむことができる選手。その中でもしっかりと結果を残している」と語り、接戦や重要な場面で力を発揮するバランスキーへ信頼を寄せる。

 オフェンスだけではなく、ディフェンス面においてもバランスキーの活躍は目を引いた。本人が「小さい時にゲームで使っていた憧れの選手」と語る三遠のエース、ジョシュ・チルドレスとのマッチアップでは、チームメートとうまくスイッチしながらチルドレスのリズムを崩し、最大の武器であるゴールへのドライブを防いだ。

 憧れの選手とのマッチアップについて、1人だけではなく、全員で守った結果であることを前提に置きつつ、「彼はすごくうまくて……。(自分が)子どもの頃、ゲームで使っていたのとは少し違う動きでした。ゲームで使っていたのは僕なので、それは当然ですけど(笑)。本人はもっとうまかったです」と笑顔を見せた。

 激戦の末に三遠を退けたA東京。セミファイナルで待ち受けるのは、リーグ最高勝率0.817を誇る川崎ブレイブサンダースだ。伊藤HCが「『ライバル』と言っていただいて構わない」と語るNBL時代からの難敵を下すことができるかどうかは、チーム屈指の勝負強さを誇るバランスキーの活躍に左右されそうだ。

文=村上成

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