Bリーグ2シーズン目の開幕を2週間後に控えた今、それぞれのチームは最終調整に余念がない。その中で練習試合を行うとなると、各々のチームの目的は自ずと違ってくるものだ。
9月16日、シーホース三河と大阪エヴェッサの練習試合では互いのチームの思惑と狙いが交錯した。大阪の桶谷大HCは「関西アーリーカップは散々の内容だった。勝ち負けもあるが、自分たちが目指しているバスケができなかった。今日の試合では練習でやっていることを、どれだけ長く試合でやり切れるかをチェックしたい」とコメント。
試合は、ティップオフ直後から大阪の思い切りのいいオフェンスが光った。まず目を引いたのは新加入のグレッグ・スミス。NBAヒューストン・ロケッツやシカゴ・ブルズでプレー歴があるセンターは、リバウンドの強さに加え、ゴール下でのシュートバリエーションの多さを披露。「さらに体調がフィットすればもっと良くなるはず」と桶谷HCからお墨付きをもらった。
次に桶谷HCが名前を挙げたのが安部潤。島根スサノオマジックから移籍のポイントガードは、思い切りのいいドライブからアシストだけでなく、外角のシュートもさえ、試合の終盤、三河を逆転する働きを見せた。「安部はこの試合の収穫の一つ」と、桶谷HCは満足気だった。
一方、「新加入が4名いるので、今はチームケミストリーを作っている段階。開幕に向けてその完成度を見たい」と三河の鈴木貴美一HCの目的はまた違うものだった。さらに「アーリーオフェンスをどんどん出していきたい」と語ったのは鈴木HC。攻撃回数を増やすことで得点力アップを目的とする、三河が目指す今シーズンのスタイルだ。しかし、これはこれまでのハーフコートオフェンスから全面的に切り替えるのではなく、それをベースに積み上げていくものだという。
その三河にスピードと勢いを持ち込んだのが村上直。京都ハンナリーズから移籍してきたポイントガードはリーグ屈指のスピードを誇る。この村上が一度コートに入ると、三河のオフェンスリズムはテンポアップ。それに呼応して、周りの選手もゴールに向かって走るようになり、チームに勢いをもたらしている。
さらに楽しみなのは、ダニエル・オルトンだ。ケンタッキー大でジョン・ウォール(ワシントン・ウィザーズ)やデマーカス・カズンズ(ニューオリンズ・ペリカンズ)というNBAのスーパースターと同期だった注目プレーヤーは、まだそのポテンシャルをすべて発揮はしていないが、その一端を示してくれた。何より驚かされたのはシュート力の高さ。フリースローの正確さだけでなく、3ポイントシュートを軽々と決めるシュートタッチも持っている。
試合は両チームとも様々な選手の組み合わせを試すという側面を持ちながら、互いの持ち味をそれぞれ発揮。最終クォーターでは大阪が三河を追い詰める場面もあったものの、ここで比江島慎が速攻からフローターを決めて同点に。オーバータイムに突入した。
この局面で際立った働きを見せたのが三河の司令塔、橋本竜馬。足が止まりかけた大阪の防御網をあざ笑うかのようにドライブ、さらに3ポイントシュートを決める。それに呼応するように金丸晃輔、西川貴之らが続き、大阪を振り切った。
「最後で勝ち切れる力がうちにはない。でも三河さんにはそれがあった。4クォーターの場面では選手起用で自分も反省しなければいけないこともあったが、収穫の多い試合だったと思う」と、桶谷HCは総括。
対する鈴木HCは「最後まで諦めずにプレーしてくれた。いい練習試合になったと思う。ただ、まだ修正しなければいけない点も確認できたので、開幕までには調整していく」と、結果には満足したものの、課題を口にした。
この時期で行われる練習試合だからこそわかるチームの状況。今回取材した2チームを含め、各チームは開幕の準備に余念がない。シーズンを通してチームは成長していくものだが、開幕ダッシュに成功したいのもチームの思惑と言えるだろう。残された時間はわずかだが、試合、練習を通してチームの準備は進んでいく。2シーズン目の開幕が楽しみだ。