【少年国体男子レポート】東山と洛南が融合した“チーム京都”が2年連続10回目の優勝

優勝を果たした京都のメンバー[写真]=小永吉陽子

「第72回国民体育大会バスケットボール競技」が10月1日に愛媛県で開幕。4日に行われた少年男子決勝では、京都(選抜)が福岡(選抜)に97-85で勝利し、大会優勝を決めた。

東山・洛南vs福岡大附大濠・福岡第一の強豪同士の決勝

 国体は都道府県の選抜選手が出場して競う大会。少年女子では優勝した岐阜(岐阜女子高校)や、新潟(開志国際高校)と愛媛(聖カタリナ学園高校)が単独チームとして出場したが、男子はすべてが混成チームとしての出場だった。その混成メンバーたちが、「いかに一つのチームになれるか」が国体でのカギとなる。

 決勝に進出した京都と福岡は全国でも屈指の強豪が競う県。京都は東山高校と洛南高校。福岡は福岡大附属大濠高校と福岡第一高校の合体チームであり、下馬評の高かった両チームが決勝に進出した。そんなハイレベルな決戦の中で、よりチームとして機能した京都が、97-85で福岡を下し、2年連続10回目の優勝に輝いた。

 出足からペースをつかんだのは京都だ。インサイドで津田誠人(洛南)とグランダマベラ・モゾンボ・クリスティン(東山)がリバウンドに絡むことで走る展開に持ちこみ、第1クォーターを24-18とリードする。福岡がリズムをつかんだのは第2クォーターに大濠のメンバー主体に変えてからだった。井上宗一郎(大濠)が高さの面でクリスティンに対抗し、得点を重ねて逆転に成功。前半を39-38と福岡リードで折り返す。

京都の小西(洛南)[写真]=小永吉陽子

 後半に入ってもまたも先に主導権を握ったのは京都だ。内外角をテンポよく決め、福岡に的を絞らせないオフェンスで一時は10点のリードを奪った。しかし、福岡は司令塔の中田蒿基(大濠)が終盤に3連続3ポイントを決めて64-64の同点にすると、勝負を振りだしに戻して第3クォーターを終える。

 勝負となった第4クォーターはまたも京都が主導権を握る。鱒拓真(東山)の3ポイント、小西聖也(洛南)と飯尾文哉(洛南)がドライブインやリバウンドに奮闘。福岡は残り5分を切って福岡第一を5人起用するが点差が縮まらず、今度は残り2分半に大濠5人を送りだして勝負をかけるが、躍動する京都のフォワード陣を止めることができず、オフェンスが爆発した京都が2連覇を達成した。

東山と洛南の個性を引き出し、役割を明確化させた京都のチーム作り

 2年連続で優勝を遂げた京都。采配を振るった大澤徹也コーチ(東山)は「マイナスを補うより、洛南と東山のいいところをたくさん出すチームにしようと練習してきました。福岡はインターハイ(平成29年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会)優勝とベスト4のチームでレベルが高いですが、僕たちも福岡に負けないレベルの高さがあるので、それを見せてやろうというのが京都の目標でした」と語る。

 決勝では4番(パワーフォワード)ポジションの京都の津田と福岡の中崎圭斗(大濠)がリバウンドと得点に絡むキーマンとなり、京都はクリスティンとカロンジ・カボンゴ・パトリック(東山)、福岡は井上とバムアンゲイ・ジョナサン(福岡第一)がインサイドで対決して互角。京都に軍配が上がったのはフォワードとガード陣の厚みだった。

京都の津田(洛南)と福岡の中崎(大濠)[写真]=小永吉陽子

 京都は鱒がシューターの役割を身につけたことで、小西と飯尾がドライブで崩して暴れ回り、「コミュニケーションが勝因」と司令塔の大橋大空(洛南)が胸を張ったように、ガード陣が声を出して引っ張った。個性ある選手たちの役割が明確化して、一つのチームになった京都が上回ったのだ。

完璧には仕上がらなかった大濠と福岡第一の混成チーム

 一方、福岡の戦い方は違った。福岡第一と大濠の混成チームで機能する場面もあったが、出足は福岡第一の速さで先手を取り、ゲームを落ち着かせるのは大濠のセットオフェンスといったように、単独チームのメンバーをコートに送りだし、それぞれの良さを引き出しながら戦う時間帯が目立った。だが、準決勝まではその戦い方でしのぐことができても、チームが一つになっていた京都の前には迷いが出てしまった。

「日頃は40分間で調整しながら戦っている主力選手たちなので、途中から出たり、流れを変えたり、短い時間の中で自分たちの良さを出すのが難しかった。完璧な“チーム福岡”になるには時間が足りませんでした」と井手口孝監督。それでも、「自チームでは主力の選手たちがあとから出たり、流れを変える役目をしたことで、それぞれに課題が見つかり、新しいバスケを勉強できた」と、経験値をつける大会にできたことには手応えを感じていた。

ベスト4の宮城と静岡。課題を持ち帰ってウインターカップ予選に臨む

 準決勝で京都に敗れた宮城は、明成高校主体のチームでありながらも、指導者育成のために明成の佐藤久夫コーチは国体の指揮官からは退いている。そんな中で明成のメンバーは「(佐藤)久夫先生に頼らないバスケを身につける」(相原アレクサンダー学)「明成以外の選手を引っ張り、自分もシュートエリアを広げる」(八村阿蓮)と明確な目標を持って臨んでいた。

宮城の八村(明成)[写真]=小永吉陽子

 チームの指揮を執った吉本世一監督も「明成の選手は佐藤先生とは違うチーム作りの中で学んでほしいし、明成以外の5選手は明成の選手から全国大会での戦い方を学び、自分のプレイを出してほしい。各チームに戻ったときにプラスとなる経験の大会にしたい」と今大会へのモットーを掲げていた。

 石川との接戦をかわしたあとに迎えた準決勝の京都戦では、選手層の厚さに対抗できずに72-89で敗れたが、逆境の場面で志賀野亮佑(利府高校)が思いきりのいいシュート力を発揮するなど、光る選手が台頭したのはプラスだ。今年は明成がインターハイで準優勝したことで、宮城にはもう一枚、東京体育館行きの切符がある。国体での奮闘がウインターカップ(平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会)予選の弾みとなるだろう。

 インターハイでベスト8と躍進した飛龍高校を主体に、浜松学院高校、浜松開誠館高校、沼津中央高校、藤枝明誠高校と5校から結成された静岡は、今大会のダークホースだった。準決勝で福岡を最後まで苦しめたのは、個性ある選手たちが次から次へとコートに出てきては粘ることができたからだ。

静岡の松下(飛龍)[写真]=小永吉陽子

 得点力とパスセンスを発揮した浜松学院のダシルバヒサシは「静岡は全国制覇できるほど層が厚いので、各チームのエースが集まるこの国体に懸けていました。チームに戻れば、ウインターカップ予選が大変なのでがんばりたい」と語る。

 国体が終わったらライバルになるのは皆同様だが、国体での熱い勝負を見れば、京都や静岡のウインターカップ予選が熾烈な争いになることは間違いない。12月のウインターカップでは、さらなる混戦になることが見えた秋の国体だった。

文=小永吉陽子

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