10月25日、2017-18シーズン初のミッドウィーク開催となったこの日、7勝1敗とスタートダッシュに成功した東地区首位のアルバルク東京は、NBL時代から長きに渡り覇権を争ってきた宿敵、川崎ブレイブサンダースをアリーナ立川立飛に迎えた。昨年のチャンピオンシップセミファイナルで苦杯を喫した因縁の相手でもあり、今季の実力を証明するためにも負けられない貴重な一戦となる。
試合開始は19時40分。実力者同士の対戦は序盤から激しい展開となった。互いにマンツーマンのタイトなディフェンスを仕掛け、相手にプレッシャーをかけるが、双方とも難しいシュートをしっかりと沈めて点の取り合いとなった。均衡状態が続いたものの、A東京は昨季得点王のニック・ファジーカスにボールを集める川崎のオフェンスに手を焼き、徐々に点差を離され、第1クォーターは16-28とリードを許す。
第2クォーターに入ると、A東京はジャワッド・ウィリアムズのアウトサイドシュート、田中大貴の鋭いドライブで次々と加点。第1クォーターの差を一気に埋めて42-43で前半を終えた。
両雄は後半も互いに高い集中力を保ったまま好ゲームを展開する。A東京は川崎のファジーカスにこのクォーター8得点を許すものの、バランスの良いオフェンスで24-21とゲームを優位に進め、第3クォーターで66-64と逆転に成功した。
試合の行方がどちらに転ぶか予想もできない好ゲームは、最終クォーターも、互いの意地と意地がぶつかり合う一進一退の攻防が展開された。A東京は、ファジーカスとディフェンダーのミスマッチを突いた川崎の攻撃に得点を許すものの、チーム全体で得点を返す我慢の展開が続く。「取られては返し」の我慢が実ったのは、試合終了残り46秒だ。24秒クロックギリギリで田中が値千金の3ポイントシュートを決めてみせて、試合を決定づける。A東京は粘る川崎の反撃を振りきって、99-91で宿敵を撃破、見事5連勝を飾った。
勝ったA東京は、篠山竜青に14得点7アシスト、ファジーカスには40得点11リバウンドの“ダブルダブル”を許しながらも、田中の25得点を筆頭に、6人が2ケタ得点を記録するバランスの良いオフェンスと、フィールドゴール成功率60.7パーセントという驚異的な決定力でゲームを制した。
試合後の会見に現れた川崎の北卓也ヘッドコーチは「エキサイティングなゲームでした。こんなことを言うのも何ですが、面白かった(笑)」とライバルとの激戦について、彼らしい率直な感想を述べると、「ただし、最後に残念ながら負けたのは悔しいですね。ビッグショットを決めた東京さんをウチは防ぎきれなかった」と悔しさも滲ませた。
一方、5連勝を飾ったA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは「選手のみんなが良くプレーをした。川崎のような良いチームに対し素晴らしいゲームをした」と一瞬笑顔を見せたが、「第1クォーターはフワーっと入ってしまった。川崎のような強いチームに対して入り方が良くなかったのは反省点だ」と表情を引き締めると、「オフェンスリバウンドは17本とられているので、これは我々のチームの課題です」と勝って兜の緒を締めてみせた。
平日の夜19時40分に開始された試合、悪天候の中、アリーナに駆けつけたファンの前に展開されたのは、チャンピオンシップさながらのハイレベルでエモーショナルな試合だった。試合を決定づけた田中の3ポイントが決まった際は、A東京の試合には珍しく「ダイキ、ダイキ」の大コールが巻き起こる。田中本人はプレーに集中していて「わかりませんでした……」と苦笑していたが、コンパクトなアリーナが作りだした臨場感と一体感はバスケットボールの醍醐味だ。「相手のフリースローの際にもブーイングが凄かったし、一体感がありましたね」と田中が語ったとおり、エキサイティングな試合に乗せられた観客自身も、魅力的なゲームを構成した重要な要素の一つとなった。素晴らしい試合に魅せられたこのゲームの目撃者が、新たに知人友人を誘ってアリーナに足を運んでくれるようになれば、さらにリーグも発展するに違いない。
文=村上成